本研究課題では、統計数理手法「データ同化」の導入により風洞、CFD を統合化し、最も確からしい設計指標を与える新しい設計技術を提案することを目指している。本年度は、以下の2つに取り組んだ。 1.遷移予測における計測情報の感度解析 計測・計算共にそれ単体での現象理解が非常に難しい遷移流れ場に対するデータ同化手法として、昨年度に構築した、表面温度計測結果からの表面摩擦抵抗の推定手法を活用した計測情報に対する感度解析を実施した。感度解析のために、数値実験上で、異なるタイプの計測情報を複数用意し、その計測情報が与える表面摩擦抵抗の推定精度を比較した。この結果により、翼中央部の温度、境界層内速度計測情報と比較して、翼の前縁温度情報が表面摩擦抵抗の推定により大きく寄与することを明らかにした。これにより、これまで定性的であった計測情報の感度を定量的に評価した。 2.流入乱れ度計測のための風洞実験 航空流体解析に残る大きな課題は乱流予測である。特に、剥離、遷移に関しては、物理モデリングの難易度が非常に高く、未だロバストな乱流モデルは構築できていない。昨年度までに、遷移予測に対し、感度の高い遷移乱流モデル中のモデルパラメータを特定した。そして、今年度は、データ同化によるモデルパラメータ値の最適化を実施する上で重要となる遷移計算における境界条件(流入乱れ度)の計測を実施した。計測には、JAXA調布航空宇宙センター内の高レイノルズ数2次元風洞を用い、計測実施にあたっての風洞試験計画の立案等を実施した。
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