研究課題
偏光は、電磁波の放射の空間分布、波長分布、時間変動とならんで天体の物理状態を探るための重要な情報源である。偏光X線は、高エネルギー現象に携わる極限天体周辺の構造や放射メカニズムを決定する鍵になることが期待され、特に、ブラックホールの時空構造や存在証明が直接観測できると考えられる。ところが実際には、1970年代にカニ星雲から有意なX線偏光が検出されて、30年観測的成果がない。そこで、私はX線天文学の新たな局面を切り開くために、回転放物面基盤にCFRPを用い、DLC蒸着によって曲げられたシリコン単結晶を貼ることで、鉄輝線付近に特化する偏光感度の極めて高い、集光する大面積のブラック反射型X偏光計を開発する。1年目として、CFRPを用いて精密な回転放物面の基盤を製作した。愛媛大学がFCRP基盤を用いたX線反射鏡基盤を製作する研究を行っているため、助言をいただきながら、基盤の試作を行った。まず、目的の回転放物面にするために、精密な金属金型を製作し、それをもとに、高精度なCFRP基盤を作った。CFRPの素材となるプリフレグを積層する際、積層する方向や枚数などを組み合わせながら、積層パラメータをいくつか調整しながら行ったところ、ミクロン程度の表面形状を持つことが確認できた。また、試作として、シリコンを貼り合わせて一体成型する方法も確立できた。これらの結果やアイデアは非常によいものであり、特許に出願した。今後は、シリコン結晶をCFRPに貼り合わせる際の最適な形などを決定し、できるだけ大面積になるような工夫を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
1年目は、CFRPを用いて精密な回転放物面の基盤を製作することであった。現在、ミクロン単位の表面形状を持つ基盤が製作できており、順調に進捗している。また、これらの成果について特許出願をすることができた。
2年目として、製作したCFRP基盤にシリコン基盤を精度よく、大面積で貼り合わせる手法を確立する。また、これらを可視光やX線で評価をしていく。1年目末に特許出願ができたため、以上の成果について、国内学会や海外学会において、発表を行い、次世代X線天文衛星の新しい偏光計として強くアピールしていく。
特許出願が1年目末に行ったため、国際発表を2年目に行うことにした。また、貼り合わせるシリコン結晶を購入する資金として2年目に回した。
2年目のシリコン結晶、並びに国際発表の主の経費として計上をする。
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Journal of Astronomical Telescopes
巻: 1 ページ: 0400441-0400447
http://dx.doi.org/10.1117/1.JATIS.1.4.044004
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 67 ページ: 2301-2316
http://dx.doi.org/10.1093/pasj/psu156