研究課題
真性粘菌 Physarum polycephalum の変形体は単細胞多核の巨大アメーバである.2000年以降に行われた数多くの研究により,変形体は空間的最適化などの計算能力並びにある種の記憶,学習能力を有することが示されてきた.しかしながら,変形体を用いた研究の多くは定常的な環境下における変形体の最適化行動に着目したものであり,変形体がどのように変動する(未知の)環境を認知し,生物らしい柔軟な行動を実現しているのかに関する研究は数少ない.そこで本研究課題では,変形体を認知的主体と見なした上で、その認知的情報処理メカニズムを明らかにすべく,実験とシミュレーションを組み合わせたアプローチにより変形体がどのようにして不定な環境に適応しているのかを明らかにすることを試みた.今年度の研究によって得られた実績は以下の通りである.1.変形体に誘引物質(栄養源)と忌避物質の混合物を与えることにより,それに対する採餌を行うかそれとも忌避するかのジレンマを有する実験を行った.その結果,同じクローンの変形体であっても採餌か忌避かの選択について分岐が起こることが明らかとなった.また,この現象は遺伝子制御ネットワークのシミュレーションによって再現された.以上の結果は,1編の国際会議論文として公表された.2.変形体が未知の空間をどのように探索し,開いた環境に適応しているのかを明らかにするため,実質的に十分な大きさと均一性を有する培地を開発し,そこでの変形体の探索行動を分析した.その結果,変形体は Lévy walk と呼ばれる探索パターンを有することが明らかとなった(雑誌論文投稿中).3.科研費による成果公表の一環として,国際会議 ICNAAM2016 において ABBII2016 と題するシンポジウムを主催した.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Proceeding of the 14th International Conference of Numerical Analysis and Applied Mathematics
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Proceeding of the Twenty-Second International Symposium on Artificial Life and Robotics 2017, The Second International Symposium on BioComplexity 2017
巻: - ページ: pp. 721-726
Proceeding of the 20th Asia Pacific Symposium on Intelligent and Evolutionary Systems
巻: - ページ: pp. 389-399
10.1007/978-3-319-49049-6_28