研究課題/領域番号 |
15K21687
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研究機関 | 公益財団法人環日本海経済研究所(調査研究部) |
研究代表者 |
穆 尭芋 公益財団法人環日本海経済研究所(調査研究部), その他部局等, 研究主任 (00551417)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国 / 地域経済 / 開発政策 / 地域発展戦略 / 実態 / 中央 / 地方 |
研究実績の概要 |
初年度の研究成果は主に2つである。1、日本では中国の国際戦略として注目されている「一帯一路」構想の、中国国内の地域発展戦略としての側面を明らかにした。具体的には、「一帯一路」は既存の地域発展戦略と比較して、①実行性を持つ初めての全国対象の地域戦略であること、②特定地域に対する特別支援政策ではなく、経済先進地域の沿海部と後進地域の内陸部を繋げて、地域間のアクセスを利便化する政策であること、③政府による直接支援ではなく、経済要素の自由な移動と効率的な配置を目指し、市場の力が発揮しやすい環境整備に重点を置く発展戦略であることを指摘した。「一帯一路」は中国の地域発展戦略の新しい展開であるといえる。これに関連する論文は、北東アジア学会の学会誌『北東アジア地域研究』に掲載される予定である。2、既存の研究を踏まえ、中国地域開発政策の展開過程に焦点を当てて、地域開発における中央と地方の関係の変化という視点から時代の区分を行った。2008年から2015年までの期間を「地方主体の地域発展戦略」の時代として区分することができると指摘した。「地方主体の地域発展戦略」の具体的な内容、展開の背景、策定状況、実施の実態や課題などを検討した。これに関連する論文をアジア経済研究所「『新型都市化』政策から見る中国の経済体制改革」研究会で報告した。報告書は同所ウェブサイトで掲載予定である。また、当研究所の機関紙『ERINA REPORT』に「一帯一路」に関する特集(No127、2015年12月)が組まれ、地域政策、内陸部の発展及び地方財政をテーマとした3本の論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①初年度は中国の地域発展戦略の全体の構図や展開の経緯を考察した。次年度に行う実施過程の分析や具体的な事例の検討に有益である。②アルバイトを雇用し、中国政府に公表された地域発展戦略の内容や実施の状況を滞りなく整理している。③国立国会図書館にて先行研究をサーベイを行ったほか、黒龍江省から専門家を日本に招聘して新潟でセミナーを実施した。各種事務設備・備品の購入もスムーズに行っている。
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今後の研究の推進方策 |
中国の地域発展戦略の実施に関する論文・新聞報道などを整理し、各地域で行われている地域発展戦略の施行状況を把握する。現地を訪問して専門家との意見交換を行い、典型的な事例を通じて地域発展戦略の実施の実態を検討し、より具体的な研究課題の分析に取り組む。現地から専門家を招聘してセミナーを開催し、研究課題に対する理解を深める。また、日本の国内における学会発表、論文執筆または各種講演を通じて研究成果の発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、先行研究や基礎的データの整理に専念し、中国現地調査を実施せず、専門家の来日招聘のみを行った。その分の支出が少なかったが、次年度に施行する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
①次年度も引き続きアルバイトを雇用し、基礎的文献のサーベイや発展戦略の実施状況に関する新聞記事などを整理する。②現地調査を行って文献や統計データでは分からない最新の政策の動きを把握する。③現地から専門家の招聘を行い、新潟で研究会を開催し、中国の地域発展戦略に対する日本国内の理解を深める。④中国地域経済統計年鑑を購入し(省別、環日本海経済研究所所蔵分を除く)、地域経済の基礎的データの整理に使用する。⑤日本国内の学会報告や先行文献収集の旅費、書籍の購入なども予定する。
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