本年度は最終年度で、主な研究成果は2つである。(1)東北地域の経済成長率の低下に留意し、中国における地域経済と地域発展戦略の変容を考察した。中国経済は高速成長から中高速成長に入っており、地域間の経済発展の様相はより重層的で、多様化している。これは、各地域における発展戦略の策定と実施の方向性に関係している。また、東北地域において、「一帯一路」政策は国境開発を中心とする国際協力策と省内大都市を中心する国内開発策を結合させた重要な発展戦略であることを指摘した。(2)地域発展戦略の展開と都市の発展の関係を明らかにした。西部大開発までの発展戦略は、中央政府が開発戦略の対象地域を選定し、中心的な都市や地域を対象に政策的な支援を行った。地方主体の地域発展戦略では、都市の発展における地方政府の役割が大きかった。「一帯一路」以降の発展戦略では、生産要素の自由な移動と効率的な配置を特徴とする地域経済の一体化が進められ、人口や産業集積の立地選択は市場の原理にしたがうという「市場メカニズムによる都市の発展」にシフトしている。 2年間の研究を通じて、中国における地域発展戦略の実施状況と地域経済発展の変容を明らかにした。これらの研究成果は、国内外の学会・シンポジウムで報告したほか、査読付き学術誌に投稿し、掲載された。今後は本研究成果を基に商業出版を目指すとともに、中国の地域経済に関する理論的な分析や統計的な手法を用いた実態分析を行う予定である。
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