研究課題/領域番号 |
15K21692
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
藤井 豊 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (20589303)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 補助循環 / 体外循環 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
近年、補助循環は循環器疾患のみならず呼吸器疾患まで適応を拡大し、全世界で約6万症例、本邦でも4千症例以上施行されており、今後も症例数の増加が予測されている。また、世界の糖尿病患者数は約4億人と言われており、本邦でも800万人(糖尿病予備軍の人口を合わせると2000万人)を超えるとされている。総人口に占める糖尿病患者の増加に加え、糖尿病患者は健常人に比べ、心疾患合併率が2~4倍高いことや、呼吸器合併症のリスクも高いということも重なり、糖尿病患者に対する補助循環施行数も増加している。 このような背景のもと、今回、我々は、糖尿病患者において非糖尿病患者に比べ、炎症反応が強く活性化されるため、補助循環中および補助循環離脱後の臓器傷害並びに、その他の合併症の発生率が上昇するのではないか?という仮説を立てた。加えて、実際の補助循環中は慣例的にPaO2:300 mmHg以上の高酸素状態で管理されることが多い。酸化ストレスを容易に受けやすいと言われている糖尿病患者に対して、過剰な高酸素管理がさらに炎症反応を助長しているのではないかという仮説も立てている。 この仮説を証明するために、課題1. 糖尿病ラットにおいて補助循環中の炎症反応が増大していることを証明する。課題2.糖尿病ラットにおいて補助循環中の臓器傷害のメカニズムを解明する。課題3. 酸化ストレスが主要臓器に引き起こす傷害の評価。補助循環中の酸化ストレスと糖尿病の病態との関連性を解明する。という3つの課題を掲げて実験を行ってきた。 昨年度は、主に課題1に取り組み、肥満2型糖尿病モデルラットにに補助循環を導入した場合、非糖尿病ラットに比べ、補助循環前、補助循環開始60分、120分(補助循環終了時)のすべての時点で炎症反応(血漿中のサイトカインレベル)が高く、さらに補助循環中の増加率も高いという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、課題1.糖尿病ラットにおいて補助循環中の炎症反応が増大していることの証明に取り組み、データを収集することができている。学会や論文での対外的な発表に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の着手予定である、課題2. 糖尿病ラットにおいて補助循環中の臓器傷害のメカニズムの解明に取り組む。前年度行った課題1での結果を踏まえ、今年度の実験を遂行する。具体的には、どの程度の炎症や傷害が、どの臓器で起こっているか検討していく。各群で主要臓器(心臓・肺・肝臓・腎臓など)を体外循環後に摘出し、組織形態的評価のためにHematoxylin-Eosin (HE) 染色および、炎症性サイトカインを放出するとされるマクロファージの検出が可能なGiemsa染色を行なう。これらの結果と、これまでに我々のグループで得られてきた糖尿病の病態に関係する見地(Shirai M, et al. J Physiol Sci.2012, Jenkins MJ,et al.Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2012)とを融合し補助循環中の臓器障害のメカニズムの解明につなげる。順調に遂行できれば、計画を前倒して実験を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、これまで持っていた消耗品(動物手術に使用する実験物品)を使用することで、物品費の使用を抑えることができた。よって、次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は今年度に比べ、物品費の支出増加が予想される。また、外注検査費用が高額であるが、研究の進捗状況に応じて、慎重かつ適切に使用する。
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