近年、補助循環は循環器疾患のみならず呼吸器疾患まで適応を拡大し、症例数は急激に増加している。また、糖尿病患者も増加の一途を辿っている。総人口に占める糖尿病患者の増加に加え、糖尿病患者は健常人に比べ、心疾患合併率が高いことも重なり、糖尿病患者に対する補助循環施行も増加している。しかしながら、糖尿病患者の補助循環中の生体反応を緻密に分析した研究は世界的に見ても少なく、未解明なことが多い。そこで、本研究では、糖尿病患者が補助循環中に受ける炎症反応と臓器傷害のメカニズムを解明するため、糖尿病モデルラットおよび、これまでに我々が構築してきた小動物補助循環モデルを用いて病態を明らかにすることを目的とし研究を行ってきた。 前年度までの研究成果としては、SD ラット群(非糖尿病モデル)およびSTD fatty ラット群(肥満2 型糖尿病モデル)に群分けし、補助循環後の各種臓器における組織形態的評価の結果、腎臓の近位尿細管領域において、糖尿病群で傷害のレベルが高い傾向であることが分かった。 最終年度の研究成果としては、血液中のサイトカインを計測した結果、糖尿病群で高く、炎症を受けやすいことが証明できた。また、主要臓器の酸化ストレスにフォーカスを当て、直接的にスーパーオキサイドの測定が可能であるDihydroethidium(DHE)染色の結果から、糖尿病群で補助循環中の酸化ストレスが高いことが示唆された。これらの成果は、糖尿病患者が補助循環中に受ける炎症反応と臓器傷害のメカニズムおよび酸化ストレスの関連性を解明する材料となり得ると考えられる。
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