本研究では、自己組織化誘導剤(CAT)を用いた細胞の自己組織化現象を利用して心筋細胞(CM)や炎症鎮静作用、心筋分化能や組織新生能力を有する間葉系幹細胞(MSC)などを用いて、核となる細胞スフェロイドを作製し、それらを細胞シートで被覆した核構造スフェロイド”セルカプセル”を作製し、それらの移植による新規の心筋再生治療法の可能性を見出すこと目的とした。 平成27年度は、CATを用いて①任意の大きさのCMスフェロイドの作製に成功するとともに、②MSCを用いてスフェロイドを細胞単層で被包化した核構造スフェロイド“MSCカプセル”の作製にも成功した。 そこで平成28年度は、核構造スフェロイドの生体内における生着と動態を調べた。赤色蛍光色素でラベリングしたMSCを核細胞、緑色蛍光タンパクでラベリングしたMSCを被膜細胞として作製したMSCカプセルをラットの腹部大動脈の外膜表面に貼付した結果、核及び被膜のいずれの細胞も血管外膜表面への生着を認め、1週間後には被膜由来の細胞(緑色)は血管周囲に拡散し、核由来の細胞(赤色)も一部は被膜細胞の外側に浸出し始めていることが分かった。さらに、貼付3週間後には核由来細胞(赤色)と被膜由来細胞(緑色)が混在した細胞重層シート構造組織体が血管の約1/4周を被覆するようにして形成していることが分かった。一方、核としてCMスフェロイドを、被膜としてMSCを用いたCM/MSCカプセルの作製にも成功した。 以上より、MSCカプセルやCM/MSCカプセルの作製に成功し、これらは生体内の組織に生着して再生組織を形成し得ることが分かった。虚血心筋への移植により顕著な心筋組織の再生が得られる可能性があると考え、さらに移植実験を推し進めている。
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