研究課題/領域番号 |
15K21694
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 晶子 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (70570795)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝カウンセリング / 専門職教育 / 医療の質 |
研究実績の概要 |
ゲノム医療の進展に伴い、遺伝カウンセリングのニーズが増加する中、遺伝カウンセリングの質向上のための取り組みは急務である。本研究では、遺伝カウンセリングにおけるエラーを収集し、エラー内容の分析や要員の同定、対策の検討を行うとともに、実際のエラー頻度を明らかにすることを目的に計画を進めてきた。 当初、平成28年度にはどのようなエラーが遺伝医療専門職で経験されているか、その背景を含めてインタビュー調査を行い、分析まで終了する予定であった。しかし、申請者の職場異動に伴う研究体制のセットアップに時間を要したことと、倫理委員会の承認を得るのに予想以上の時間がかかったことから、研究計画は遅れている。 ただし、倫理委員会の承認が平成28年12月末に得られたのち、翌29年2月には臨床遺伝専門医に対し、郵送によるインタビュー依頼を実施した(愛知、大阪、京都、奈良、兵庫、和歌山の医療機関に在籍する計290名)。また、日本認定遺伝カウンセラー協会のメーリングリストを通じ、認定遺伝カウンセラーに対してインタビューの依頼を行った。認定遺伝カウンセラーについては、同メーリングリストから一度、リマインドのメールを配信した。結果、臨床遺伝専門医28名、認定遺伝カウンセラー16名(ともにインタビュー実施予定者を含む)からインタビューの協力が得られ、3月初旬よりインタビューを開始、6月まで継続して行う予定である。 研究計画にて予定していたインタビュー目標数30名を超える対象者から協力が得られ、また各対象者の経験年数(1-20年)や専門分野(出生前診断、小児科領域、遺伝性腫瘍、遺伝性神経筋疾患 等)も幅広く、様々な領域でのエラーの経験が得られる予定である(提出時現在)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度に、職場を異動し、セットアップに時間を要したことと、新たな職場での倫理委員会承認までに予想以上の時間がかかったことにより、研究の進捗は遅れている。しかしながら、倫理委員会承認後はスムーズに研究をスタートさせることができ、また対象者からのインタビューの協力も得られ、遅れを取り戻すべく現在インタビューとその分析を急いでいる。 28年度内を予定していたインタビューの分析が終わり次第、アンケートによる量的調査を計画し、29年度中にアンケートを実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画が遅れているが、平成29年度には、インタビューの分析を終え、報告をまとめるとともに、量的調査のためのアンケートの作成、ウェブによるアンケートの実施を計画している。 インタビューが終了次第、匿名化に配慮しつつ、テープ起こしと分析を順次始める予定である。分析は、申請者を含め3名の分析者で行い、エラーの分類や誘因、対策について、当事者の課題、環境の課題、クライエントの状況、疾患特性、体制の問題などの視点から内容分析を行うこととしている。当初、遺伝医療専門職の失敗やエラーの経験を収集することに注力していたが、インタビューにおける話の広がりで、対応に苦慮するクライエントの経験談や他の医療職との関係性の問題なども多く聞かれた。現在、詳細な分析の結果は得られていないが、遺伝医療専門職の抱える実情をより忠実に反映できるよう、結果の示し方について柔軟に検討したいと考えている。 ウェブアンケート調査の項目は、これらのインタビューの結果を元に検討し、実際にどのエラーや問題の頻度が高いのか調べることを目標としている。ウェブアンケートは、臨床印伝専門医と認定遺伝カウンセラーを対象に実施する予定である。これらの調査を踏まえ、現状の遺伝医療専門職のエラーや経験された対応困難ケースをまとめ、より重点的に対策や教育をしなければならない点や、具体的な対策について示唆することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の職場の異動により、年度初めから研究活動がすぐにスタートできなかったことと、倫理委員会の承認までに時間を要し、年度内に調査が十分にすすめられなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、インタビュー調査が進行中であり、そのための旅費および得られたデータについてテープ起こしを行う予定である。また、分析が終了次第、ウェブアンケートを行う予定である。
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