研究課題/領域番号 |
15K21694
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 晶子 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (70570795)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝カウンセリング |
研究実績の概要 |
本邦の遺伝カウンセリングにおいて、遺伝医療専門職が直面する実践的な課題や倫理的課題の調査・分析は十分に行われているとは言えない。遺伝カウンセリングの場で起こるエラーや課題を拾い上げ、対策を行うことは、今後ますます需要が見込まれる遺伝カウンセリングの質向上のために急務である。よって本研究では、遺伝カウンセリングで経験される課題を明らかにするため、インタビュー調査を実施した。 2017年3月から7月にかけて、近畿圏の臨床遺伝専門医および全国の認定遺伝カウンセラーに対し、インタビュー調査を実施した。インタビューは対面または電話で実施し、属性の他、遺伝カウンセリングの実施体制、遺伝カウンセリングにおける困難について質問した。インタビューは許可を得て録音し、逐語録を作成後、既報の分類を参考として、分析者3名による帰納的内容分析を行った。 研究参加者は臨床遺伝専門医29名、認定遺伝カウンセラー17名、臨床遺伝専門医研修中医師1名、看護師1名の計48名(男性19名、女性29名)であった。そのうち、5組14名はグループインタビューであった。関与する分野(複数回答可)は、出生前診断が最も多く32名であった。分析の結果、「実践上の課題」として遺伝カウンセリング体制や遺伝カウンセリングスキルの不足・不得手等が挙げられたほか、二次的所見や結果の解釈など「遺伝子診断や研究等に関連する課題」、クライエントと遺伝医療専門職の意見の対立などの「倫理的問題を含む課題」、遺伝カウンセリング技術の指導が得にくいことや遺伝医療専門職の仕事の範囲などを含む「専門職の課題」が挙げられた。今回のインタビュー調査の対象者は限られており、一般化には限界があるものの、多様な課題が抽出された。尚、本調査の結果は、2018年6月に行われる日本遺伝カウンセリング学会学術集会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の期間中、産休の取得およびその後の時短勤務により、研究遂行に遅れを生じ、研究期間の延長を申請した。しかしながら、第一段階のインタビュー調査は終了し、インタビュー調査を基にした量的調査の準備中であり、延長研究期間内に当初計画していた調査は実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今回のインタビュー調査では、現在、遺伝医療専門職の抱える課題のバリエーションを抽出することを目的に、分析を行った。今回の結果を基に、多くの専門職が抱える課題は何か、量的調査を実施することを計画している。 量的調査の対象は認定遺伝カウンセラーとし、インタビュー調査で主に認定遺伝カウンセラーから挙げられた課題について、頻度および属性(経験年数、専門分野等)と抱える課題の関係性を調査する予定である。 得られた結果より認定遺伝カウンセラーが日々の業務で抱える課題および対策が提言できれば、認定遺伝カウンセラーの教育に生かせるだけでなく、遺伝カウンセリング自体の質向上につながることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究の期間中、産休の取得およびその後の時短勤務により、研究遂行に遅れを生じ、研究期間の延長を申請したため。今後予定している量的調査および成果発表のための費用を繰り越した。 (使用計画) 今年度中に、認定遺伝カウンセラーを対象とした量的調査を実施予定であり、通信費およびデータ入力等の人件費に予算を計上する予定である。またインタビュー調査および量的調査の成果発表(学会発表・論文発表)の費用とする。
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