本邦において、遺伝医療専門職が直面する倫理的・専門職的課題の調査はいまだ十分ではない。薬剤や治療方法の選択、疾患の予防や早期発見につなげる情報を得るための遺伝子検査が医療現場に拡大する中、より良い遺伝カウンセリングを提供するのためには、実際の課題を分析し対策を検討することが重要である。本研究では、遺伝カウンセリングにおける困難や課題を明らかにすることを目的にインタビュー調査を実施した。 対象は近畿圏の臨床遺伝専門医および全国の認定遺伝カウンセラーとし、対面または電話でのインタビューを行った(2017年3月から7月)。インタビューでは、属性の他、遺伝カウンセリングの実施体制、遺伝カウンセリングにおける困難について質問した。内容は許可を得て録音し、逐語録を作成後、分析者3名による分析を行った。今回は既報を参考とした演繹的分析および遺伝子解析や検査に関する困難に焦点を絞った帰納的内容分析の両方を実施した。 研究参加者は臨床遺伝専門医29名、認定遺伝カウンセラー17名、臨床遺伝専門医研修中医師1名、看護師1名の計48名(男性19名、女性29名)であった。関与する分野(複数回答可)は、出生前診断が最も多く32名であった。演繹的分析では、既報で倫理的・専門職的課題として抽出されていたドメインに当てはまるコードが得られた。さらに本研究で新たなサブカテゴリーを抽出した。また遺伝子解析や検査を分析の視点とした帰納的分析でも複数のカテゴリーにコードをに分類し、分析を行った。本調査の対象者は限られており、一般化には限界があるが、遺伝医療の発達段階の多様な課題が抽出された。
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