研究課題/領域番号 |
15K21695
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
西垣 孝行 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 臨床工学技士 (20623408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体外式心肺補助装置 / PCPS / 補助循環 / ガスフラッシュ |
研究実績の概要 |
本研究では、体外式心肺補助装置における人工肺のガス交換性能を自動で監視することで操作者を支援するガス交換性能管理支援システムを新規で開発する。具体的には、ガス吹送圧力を測定するハードウェアと、それを解析するソフトウェアの2つの基盤技術構築を目標に掲げている。 ハードウェアについては、平成27年度の研究計画に従って、小児領域の高精度圧力測定ユニットを構築した。当初の予定では、前半に完了する予定であったが、微小なガス吹送圧の変化を詳細に測定できる圧力センサの選定と精度の検証に時間を要した。これらの検証については、学会発表を実施した。 ソフトウェアの開発については、臨床データが必須となるため、自動記録システムの臨床使用について倫理委員会への申請を行った。生命維持装置である体外式心肺補助システムに対して工業用の圧力センサを用いることから倫理審査のハードルが高く、観察研究ではなく介入研究での申請を余儀なくされた。しかし、体外式心肺補助装置の導入時は、緊急的かつ患者の命を左右する状況であることから患者家族への代諾が精神的な負担を助長させる可能性が考えられ、介入研究として代諾書を得るのは現実的に不可能であると判断された。そこでオプトアウトによって情報公開と拒否機会を得る観察研究として、可能な限りリスクを下げる手順で研究計画書を変更した。当初の研究計画から少し遅れを取ったが無事に倫理委員会での承認が得られ、現在は、順調に臨床データが蓄積されている状況である。臨床データの解析結果について、2件の学会発表を予定している。 現段階の臨床データから、結露による閉塞率の評価が可能なことを確認し、ガスフラッシュ施行中の圧力、施行時間、またその効果を検証できる可能性が示唆された。さらにガスフラッシュによるインシデントも2件記録されており、リスク分析における有用性が確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハードウェアの構築に関して遅れを生じた理由は、圧力センサの選定にある。0.1 mmHgの分解能を持ちながら高圧領域(100 – 200 mmHg程度)の記録も必要になるため、あらゆる圧力センサ会社に連絡して情報取集を行ったものの、現段階では存在しない事が明らかとなり、方向を修正せざるを得なかった。小児領域に関しては、2種類の圧力センサにより同時に測定することで問題を解決した。 ソフトウェアについては、倫理委員会での承認の遅れが最大の理由である。しかし倫理委員会への申請と並行して、臨床データを必要としないインターフェイスの開発および、支援システムに必須となる表示方法の検討を臨床研究に先だって実施した。現在は、臨床データが続々と収集されており、複数のプログラムを速やかに開発できると示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データを随時解析することにより、ガスフラッシュの最適な施行方法を検証し、さらにはガス交換性能の低下予測プログラムや空気塞栓を予防するガス吹送圧の上限警報プログラムを作成する予定である。 研究が遅れた場合の対応策として計画していた心臓手術における人工心肺装置の人工肺ガス吹送圧の測定を実施する予定である。人工肺の各メーカーの違いや構造の違いなどが、どの程度、ガス吹送圧に反映されるのかを検証予定である。 最終目標としては、本研究における全体のプログラムを統合し、ベッドサイドで容易に使えるガス交換性能管理支援システムを構築する。本支援システムの検証およびシミュレーション教育における有用性も検討予定である。また多数の学会発表と論文発表を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
倫理委員会におけるオプトアウトによる観察研究で承認を得るのに時間を要したため、圧力測定ユニットの構築においても、台数を減らし、臨床データの収集を開始した後に圧力測定ユニットを増やす方針に変更した。また予定の圧力測定ユニットの構成デバイスよりも大幅に安価なデバイスを選定することができたことも要因である。さらに臨床データを用いたソフトウェアの開発が遅れたため、学会発表数が少なくなった。国際学会と論文執筆にかかる費用が次年度に持ち越される結果になっている。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床研究をスタートしているが、体外式心肺補助装置の導入患者は数が限られる(年間40例程度)ことから、心臓血管外科手術(年間600例程度)に用いる人工心肺装置の人工肺においてもガス吹送圧力の自動記録を実施し、症例数を増加させる予定である。そのため圧力測定ユニット(タブレットPC、2種類の圧力計とアンプ)を2台購入予定である。 また情報収集や発表のため、多くの学会に参加を予定している。研究成果発表用(国際学会)、研究成果として国際誌への投稿を予定しているため、英文校閲費を計上している。
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