研究課題/領域番号 |
15K21696
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
大高 晋之 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30739561)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞ローリング / ラベルフリー細胞分離 / iPS細胞 / 心筋分化 / 高分子界面 / MPC |
研究実績の概要 |
本研究は、抗体標識を伴わない細胞分離がiPS細胞の分化特性に与える影響を評価することを目的として、iPS細胞より分化誘導した中胚葉前駆細胞から“細胞ローリングカラム”を用いてFlk1陽性細胞集団を分離する実験系を構築し、本分離法が心筋分化特性に与える影響の評価を目指す。本年度は、リン脂質ポリマーをコートした抗体固定化カラム界面に抗Flk1抗体を固定化し、Flk1陽性細胞分離のためのカラムの作製をおこなった。また、iPS細胞より中胚葉前駆細胞を分化誘導し、フローサイトメーターを用いてFlk1陽性細胞の存在を確認した。本細胞を抗Flk1抗体固定化カラムに流し、位相差顕微鏡を用いてカラム表面上での細胞移動速度を評価したところ、抗Flk1抗体を固定化したカラムに中胚葉前駆細胞を流した条件のみで細胞移動速度の選択的な低下が観察された。以上の結果から、Flk1陽性細胞分離のためのカラム作製条件を決定した。また、蛍光標識抗Flk1抗体を固定化したカラムに中胚葉前駆細胞を流し、回収した細胞の膜表面を共焦点顕微鏡で観察した。回収した細胞表面には蛍光標識された抗体の存在は確認されず、以上から本実験条件によりラベルフリーで細胞分離する実験条件が確立できた。現在は、Flk1陽性細胞を心筋細胞分化へ誘導するための分化誘導条件を検討している。今後は、心筋分化のための培養条件を確立したうえで、細胞ローリングカラムを用いてラベルフリー分離したFlk1陽性細胞を分化誘導し、本分離法が心筋組織への分化特性に与える影響を、遺伝子発現量、拍動細胞の有無、細胞膜電位によって評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の取り組みは、①カラムの作製条件・細胞分離のための処理条件の検討というデバイス面での取り組みと、②iPS細胞の中胚葉前駆細胞への分化・Flk1陽性細胞の心筋細胞への分化の分化条件検討の取り組みに分類できる。①については、細胞分離のための条件決定ができたのみならず、本細胞分離方法のラベルフリー性についても確認でとれ、想定していた以上の成果を得た。一方②の取り組みについては、初年度内に確立する予定をしていたFlk1陽性細胞の心筋分化条件が確定できていないため、今後遺伝子による解析を交えた早急な分化条件の確立を要する。当初より進捗状況が遅れている部分と先行している部分はあるものの、総合的にはおおむね順調に進呈しているものと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
従来、ヘテロな細胞集団から目的細胞を回収する方法として抗体標識を伴った方法が広く利用されているが、この抗体標識は細胞の分化特性への影響が懸念されている。初年度の取り組みにより、細胞ローリングカラムを用いたFlk1陽性細胞の分離では抗体標識されないことが確認された。心筋分化誘導条件を確定するため、遺伝子解析による評価を交えながら、FACSAriaにより単離したFlk1陽性細胞の心筋分化誘導条件の早急な確立を目指す。誘導条件が確立しだい、細胞ローリングカラムを用いて単離したFlk1陽性細胞についても同様の心筋分化誘導実験を行い、FACSAriaで単離した場合との違いを比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の理由で、心筋分化誘導の培養条件が確定しなかったため、当該年度に予定していた細胞の分化誘導実験のための予算分を翌年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、分化誘導培養の条件検討実験に必要な、解析試薬や分化誘導を促進するための成長因子を購入することで、心筋分化誘導条件の早急な確立を目指す。その後、異なる分離条件を用いた心筋分化誘導実験に対して集中的に研究経費を充当して、効率的な成果創出を進める。
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