様々な冠動脈病変の進行を予測し、早期に治療介入する事は循環器病学の重要課題の一つである。本研究の研究項目は、冠動脈病変の進行予測のバイオマーカーとして着目した好中球Rhoキナーゼ活性と①動脈硬化病変の重症度、組織性状、②心臓移植後の冠動脈病変の進行、そして③これらの病態における長期的な心血管イベントとの関連性について検討する事である。 Rhoキナーゼの活性と冠動脈硬化病変の重症度(狭窄度や病変数、病変組織性状)との関連性を検証した。冠動脈硬化症を疑われ、冠動脈造影検査を施行する患者を対象とし、末梢血好中球のRhoキナーゼ活性を計測し、冠動脈造影上の冠動脈硬化病変の重症度との関連性を検証した。対象患者75例の血液サンプルを採取して、検証を行っている。 また、心臓移植後の冠動脈病変の進行に関与する因子の検証を進めるために、心臓移植後患者の冠動脈を三次元血管内血管内超音波によって解析し、発表を行った。論文、学会発表の成果として、ドナー心由来の持ち込み病変の存在が、移植後1年目から3年目までの病変の進行を予測する事を報告した(Transplantation 2016 in press)。また、心臓移植後患者の新規の免疫抑制薬であるエベロリムスへの変更が病変の進行を抑制し、その抑制効果は血管内膜増殖の抑制だけでなく、血管外膜の縮小変化の抑制によってももたらされることを報告した(International Journal of Cardiology 203 (2016) 307-314)。更に、レシピエントの上腕動脈の血流依存性血管拡張反応により評価される、末梢血管の内皮機能の低下が、冠動脈病変の重症度と関連する事を報告(日本血管生物医学会2016、Young Investigator Award 優秀賞)し、心臓移植後の冠動脈病変進行の予測に用いる事が出来る可能性を見出した。
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