研究実績の概要 |
化学汚染に係る現行の公定法には、事故や災害を想定した調査マニュアルがない。このような緊急時における環境調査では、汚染の全体像を把握することが難しく、調査が長期化するため、その後の対応が遅れることが多い。そのため、緊急時の環境調査にも適用可能な新たな分析法を開発することが急務である。本研究では、土壌および底質中の有害化学物質を迅速・簡易・網羅的に検知する分析法(土壌診断法)を確立するため、有機汚染物質と重金属類を同時にスクリーニングする手法を開発した。これまでに得られた研究成果を以下に示す。 ①二相系溶媒による抽出法を考案し、有機汚染物質と重金属類を逐次的に抽出する方法を確立した。この手法に基づき、重金属類抽出に関する最適化検討を行った結果、抽出溶媒は1 N塩酸、抽出温度は100℃、抽出時間は10~30分間であることが分かった。 ②土壌認証標準物質(JSAC 0402)を対象に重金属類(Cr, Cu, Zn, As, Se, Cd, Pb)の定量試験を行った結果、各項目の成分含有率に対して濃度比率で60%以上であった。また、環境省告示第19号による認証値よりも高い分析値を示した。 ③土壌汚染に係る環境基準物質のうち、有機汚染物質7種(チウラムは除く)について標準物質による添加回収試験を行った結果、メチルジメトンを除き、73~107%であった。 ④開発スクリーニング法を用いて、東日本大震災のガレキ集積場の土壌汚染調査を実施した結果、調査地域全体の汚染状況を把握することができ、検出物質の濃度や組成パターンについて、経年的な変化を明らかにすることができた。
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