研究課題
本年度は,昨年度計画した温度環境が顔・表情認知に及ぼす影響についての実験を実施した。実験では,参加者を高温(27度),中温(24度),低温(21度)の3条件に割り当て,それぞれの温度環境下で,表情認知および顔記憶の課題を実施した。また,同じ温度であっても,季節によって感じ方の違いがある可能性が想定されたため,夏期と冬期に同様の手続きで実施した。表情認知課題については,モーフィング技法により,オリジナルの恐怖,喜び,悲しみ表情の各写真から,恐怖と喜びの間,および悲しみと喜びの間の段階的な曖昧表情写真を作成し,参加者に呈示して,それぞれの写真がいずれの表情であるかを評価させた。顔記憶課題については,学習時に,参加者に複数枚の恐怖または喜び表情の人物の顔写真を呈示して覚えさせた後,3分間の遅延時間をおき,学習時には呈示されなかったディストラクター人物とともに,ターゲットの人物の写真を呈示して,学習時に見た人物か否かを回答させた。実験の結果,表情認知課題については,季節および環境温度によって,曖昧表情への判断が変化することが示唆された。とりわけ,恐怖表情と喜び表情のモーフィング写真について,夏期では高温,中温に比べて,低温の方が曖昧表情を喜び表情であると判断していたのに対し,冬期では,高温,中温に比べて,低温の方が曖昧表情を恐怖表情であると判断していた。明確な表情では季節および温度環境の効果は見られなかった。一方で,悲しみと喜びのモーフィング写真については,明確な温度環境の効果については見られなかった。顔記憶については,温度環境や季節にかかわらず,喜び表情が恐怖表情よりもよく記憶されていた。これらの結果から,環境温度が季節との相互作用によって曖昧な表情の認知に影響しうること,一方で,明確な表情の認知や顔記憶に対する影響は弱いことが示唆された。
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健康科学研究
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info:doi/10.15097/00002675
Royal Society Open Science
巻: 4 ページ: -
10.1098/rsos.170121
Emotion
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