研究課題
これまでに我々は、ヒトにおける膜貫通型ユビキチンリガーゼを新規に37種類同定した。さらに、ヒト・マウス組織を用いた発現解析により、中枢特異的な発現パターンを示すRNF182を見いだした。RNF182はアルツハイマー病において発現が増加することが報告されている。RNF182は小胞体や後期エンドソームおよびライソゾームに局在していたが、ショットガンプロテオーム解析により、RNF182結合タンパク質としてライソゾームタンパク質LAPTM4Aを同定した。つぎに、RNF182によるLAPTM4Aのユビキチン化様式について検討したところ、RNF182はK48とK63を介するユビキチン鎖を形成することが判明した。また、LAPTM4Aはそのファミリータンパク質であるLAPTM4Bと結合し、LAPTM4Bは、オートファジー経路においてオートファゴソームとライソゾームの融合に関連することが報告されていることから、つぎにRNF182のオートファジー経路への関与を検討した。神経芽細胞腫SK-N-MCにおいてRNF182をノックダウンすると、LC3-IIが増大した。また、オートファジーの基質タンパク質であるp62が増加したことから、RNF182の発現低下により、オートファジーによるタンパク質分解過程が抑制されることが判明した。以上の結果より、RNF182は、LAPTMファミリーのユビキチン化を介してオートファジーの活性を制御している可能性が考えられる。アルツハイマー病との関連性明らかにするため、RNF182のノックアウトマウスをCRISPR/Cas9法によって作製したので、今後解析していく。
1: 当初の計画以上に進展している
神経に高発現するユビキチンリガーゼRNF182を同定し、オートファジーとの関連性を新たに発見した。オートファジーはアルツハイマー病やALS等の神経変性疾患に深く関与しており、期待以上の発見であると考える。また、CRISPR/Cas9法は劇的に進歩しており、我々も自前でノックアウトマウスを作製できるようになり、多くの遺伝子について検討できるようになった。
今後は、その他の神経系に発現するユビキチンリガーゼのノックアウトマウスを順次作製していく。また、GFPを挿入したノックインマウスも作製し、組織内の分布などの解析にも用いていく。今後はRNF182の生理機能に関して、ノックアウトマウスも用いて、分子および個体の両側面からさらに掘り進めていき、当初の計画以上の成果を得られるよう注力する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/imaizumi/index.html