研究課題/領域番号 |
15K21764
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉野井 冬彦 京都大学, 高等研究院, 特定教授
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研究期間 (年度) |
2017 – 2019
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キーワード | メソポーラスシリカナノ粒子 / 癌へのターゲティング / 鶏卵の癌モデル |
研究実績の概要 |
BNCTの癌治療はホウ素に中性子を当てることにより生じるアルファー線により癌細胞をころす画期的な癌治療法である。現在の治療法は低分子量のホウ素化合物を用いるため、癌細胞に特異的な効果を生じにくい。そこで私達は、ホウ素含有ナノ粒子を用いることでBNCTの効果を飛躍的にあげることができると考えている。 これまでの研究により、まずメソポーラスシリカナノ粒子の作成をSol-gel法を用いておこなうことができた。作成された粒子の解析をおこない、約80nmの均一な粒子を作れたことを確認した。ホウ素化合物をナノ粒子の中に内包するにはいくつかの方法があるが、まず予備的実験を行い、現在さらに検討中である。 こうして作成したナノ粒子が癌細胞に蓄積するかということは次の2点から検討している。まず癌細胞を用い、細胞内に取り込まれ蓄積することを確認した。次に卵巣癌と肺癌の鶏卵モデルを用いてナノ粒子の癌への蓄積を検討し、高い癌蓄積能を持つことを確認した。 また京都大学複合原子力科学研究所でのBNCT実験の準備を始め、第一回目の予備実験をおこなった。卵巣癌の鶏卵モデルを用い、癌を作らせた鶏卵にBPAを打ち込み、中性子照射を行い、効果を見たところ、癌の縮小がみられた。一方、BPAのみ、また中性子照射のみでは効果がみられなかった。これらの知見は、今後鶏卵モデルを用いたBNCT実験が可能であることを示唆している。この実験は京都大学複合原子力科学研究所の鈴木実教授との共同実験として進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画では予定として(1)ホウ素含有メソポーラスシリカナノ粒子の構築と解析、(2)癌細胞、癌鶏卵モデルでの解析、(3)癌鶏卵モデルを用いたBNCT実験をあげた。そのうち、(1)と(2)に関してはほぼ完了している。(3)に関してはまず予備実験を成功させ、実験のめどがついたところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の実験としては動物モデルを使ったBNCT実験を計画している。ナノ粒子と鶏卵の癌モデルの研究は高等研究院で行うが、鶏卵の癌モデルの実験の一部とBNCT実験は京都大学複合原子力科学研究所で行う。実験用原子炉の使用申請はすでに行っており、数回の実験の時間を確保できるはずである。鶏卵の癌モデルにホウ素含有ナノ粒子を打ち込み、中性子照射を行い癌への影響を検討する。ナノ粒子を使わない低分子のホウ素化合物との比較を行う。癌へのホウ素の蓄積、照射した中性子の量などデータを集め、実験を積み上げていく。BNCTの癌への影響を検討する。 ナノ粒子の改良、鶏卵以外の動物実験モデルの検討は同時並行させ、平成31年度の実験にそなえる。またBNCT実験のTheoretical modelにも取り組もうと思う。例えば中性子照射によるアルファー線の発生量の予測に関しての検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の設立に多少時間がかかったために、実験の予定が少し遅れた。しかし現在は研究員を集めることに成功し実験態勢ができ、今年度に多数の実験を行う予定にしている。
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