研究実績の概要 |
平成29年度の交付申請書の研究目的と実施計画として立案した次の3つの項目に対して集中的に研究することを計画した。即ち、1)滑らかな係数を持つ等方弾性方程式の境界値逆問題の一意性は大きな未解決問題である。その解決の為の大きな一歩として、この境界値逆問題に対するgeneric uniquenessを示す。2)反射地震学の逆問題である区分的に解析的な係数を持つ非等方弾性方程式に対する係数同定逆問題のglobal uniquenessを、static case, stationary case, dynamical caseの3つの場合に対して示す。3)能動的サーモグラフィを用いた未知空洞の理論的再構成スキームの一つであるlinear sampling methodを適用する際に現れるinterior transmission problem(以下ITPと略)の適切性を示す。これらの研究計画をもとに研究を開始したが、2), 3)に関する研究が先行し、特に2)の研究は非常に大きく発展して行った為その研究を集中的に行った。そのため1)の研究は平成30年度に先送りした。2), 3)の研究実績は次の通りである。 2)については、ITPのGreen関数を構成し、それを用いてITPの適切性を示した。これらの結果は、極めて斬新で重要な結果である。今後これらの結果とその中で使われた方法は、様々な問題に応用が見込まれる。 3)については、static case, stationary case, dynamical caseの何れに対してもglobal uniquenessを示すことが出来た。特に区分的に斉次な場合はほぼ完璧な結果が得られ、区分的に解析的な場合は横等方弾性方程式と斜方晶系型非斉次弾性方程式のそれぞれの係数同定問題についてglobal uniquenessを示した。但し、前者に対しては対称軸、後者に対しては対称面を既知とした。
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