最終年度はこれまでの成果をまとめ、対外発表及び論文公表することに注力した。本研究で創出した技術を「Synthetic Engineering Platform(ファージ合成改変プラットフォーム 2.0)」と名付け、計画通り積極的に発表した。
本研究の目的は、研究代表者が2015年に発表した「Phage Engineering Platform」を発展させ、ファージ改変における革新的基盤技術を創出すること、また、当該技術を用いて実際にデザイナーファージを創出し、応用例を示すことである。in vitroでDNA断片からファージゲノムを構築する技術を確立し、これを適切な宿主細菌へ入れることで機能的なデザイナーファージを起動させることを可能にした。本手法は迅速性と効率性に優れており、ファージ改変におけるDBTLサイクルを推し進めることに繋がった。プラットフォーム 2.0を用いて、以下の成果をあげることができた。(1) 抗酸菌に感染するファージを含め、様々なファージを改変起動させるためのプロトコールを確立した。(2) 化学合成したDNAから約53 kbpのファージゲノムを再構築して、機能的なファージを起動した。(3) 無細胞転写翻訳系を合わせることで、ゲノム構築からファージ起動までを完全な無細胞系で実施できることを示した。(4) 改変型ファージの応用を見据え、一度限りの感染と殺菌を可能にする生物学的封じ込めファージを創出した。(5) ファージ療法実験において生物学的封じ込めファージの有効性を実証した。
本研究成果の詳細は2022年に発表した論文に詳しいが、ファージの改変を必要とする基礎研究及び応用研究や、生物学的封じ込め策を施した改変型ファージの利用、データベース上のデジタルゲノムデータからのファージ起動など、ファージ生物学と関連分野における新しい基盤技術になるものと考えている。
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