研究実績の概要 |
遺伝性疾患ファンコニ貧血の原因蛋白と家族性乳癌卵巣癌原因蛋白BRCA1, BRCA2は共同してDNA損傷修復を制御するFanconi anemia(FA)-BRCA pathway を形成する。我々はこのpathwayを制御する新因子として脱ユビキチン化酵素USP28を同定し、またFANCIのリン酸化・脱リン酸化がFA-BRCA pathwayの制御の鍵を握る現象であることを発見した。本研究はこれらの因子の解析を主目的とする。平成29年度にはまずFANCIのリン酸化・脱リン酸化の意義に関するデータをまとめ原著論文を投稿し出版した(Cheung RS, et al. Cell Reports, 19 : 2432, 2017)。さらにこの研究の結果を踏まえてファンコニ貧血に関する英文(Cheung RS, et al. International Journal of Hematology, 106 : 335, 2017)と和文(谷口俊恭. Fanconi貧血の分子病態解明の進歩. 血液内科, 76 : 76, 2018)の総説論文を執筆投稿し出版した。またUSP28, FANCIと様々なFA-BRCA蛋白の相互作用を詳細に調べるためにPLA(Proximal Ligation Assay)を導入した。USP28の機能解析を進めるためにCRISPR-CAS9システムを用いてUSP28のknockout cellの作成を試みた。USP28が主に細胞周期G1期に核内fociを形成すること、またこの反応はリン酸化酵素ATM依存性だがATR非依存性であることを明らかにした。これらはFA-BRCA pathwayにおけるUSP28の役割を理解するために重要な情報である。次年度はこれらのデータをまとめた原著論文を投稿するとともに、さらにUSP28, FANCIの解析を進める予定である。
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