研究課題/領域番号 |
15K21772
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石井 佳誉 東京工業大学, 生命理工学院, 教授
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研究期間 (年度) |
2017 – 2019
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キーワード | 固体NMR / amyloid / 微量測定 / 高次元NMR |
研究実績の概要 |
研究目的として以下の3つを挙げた。(i)超高速MAS法を使った微量生体試料観測のための高磁場固体NMR法と(ii)分解能向上のための高次元固体NMR法の開発を行う。(iii)アルツハイマー病に関連したアミロイドとリガンド分子の相互作用の構造生物学を確立する。 1年目の昨年度では研究環境の整備と共に課題(i)の研究でモデルタンパク質(GB1)に対してわずか9秒で2次元^1H/^<15>N固体NMRが得られることを示し(J. Magn. Reson 2018)、1~5 nmolレベルの試料に対して数分から数時間の間で測定が可能であることを示した。これにより課題(i)を達成した。今年度は(ii)に移行して、当研究室で開発した^<13>C-^<15>NCP磁化移動法であるCP-X法(別個のプログラムで開発)を用いて、通常は0.5-1日程度必要な3次元の固体NMRが80nmolのGB1微量試料に対してわずか1時間で測定可能であることを示した。現在論文投稿準備中である。更に、タンパク質の4次元固体NMRについても予備的データを得た。実験の最適化により、更に分解能の大幅な向上が可能となる予定である。高次元固体NMR法のSAILラベル試料に対する応用に関しても測定を準備している。(iii)に関しては当初予定していた^2H、^<13>CラベルしたAβ試料の収量が今のところ低いため、ペプチド合成で作成した選択^<13>Cラベルした試料に対してAβのアミロイドに結合するカテキンであるEGCGと蛍光色素のThioflavin-Tの結合を^<13>C-^<13>Cもしくは^<13>C-^1Hの2次元測定法で検出できないか評価中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(i)については昨年度に目標を達成した。固体NMRと試料作成の環境整備についても順調に推移している。ボトルネックであった感度の問題を解決して、課題(ii)についても高次元NMRと選択的ラベル試料の利用により目標としていた結果を得ている。(iii)については試料作成以外は順調に推移している。試料調整が上手くいかない場合に備えて、実験のデザインを変更して対応している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までに課題(i)はほぼ達成した。2019年度は課題(ii)については、3次元の固体NMR法に対しても微量タンパク質試料に対する測定が可能であることを示した。更なる多次元化により適用できる試料の分子量の増加に対応する。また選択ラベルによる分解能増加についてはSAIL法に加えて、独自の新しい選択ラベル法の開発を進め、2つを組み合わせることで効果をあげることを目指す。試料作成に加えて、分解能向上のための4-5次元固体NMRの実験を行う予定である。(iii)に関しては^2H、^<13>Cラベルか^<13>C残基選択的ラベルしたAβフィブリル試料に対しリカンドであるThioflavin-Tとの^1H間のコンタクトを測定する実験を行う予定である。抗体等の分子量の大きなリガンドに対しても実験の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(ⅱ)の実験について思ったより効率良く実験が進んだのと、予定していた論文の出版が来年度にずれ込み、その結果当初予期していたよりも、若干使用額が減った。差額はわずかであるので、今後に影響はないと思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
使用額との差は今後の使用額をわずかに調整することで対応可能と思われる。物品費に450万円、旅費に80万円、人件費に390万円、その他として出版に80万円、電子顕微鏡や質量分析などの装置の利用料として40万円程度を見込んでいる。
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