研究課題/領域番号 |
15K21772
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石井 佳誉 東京工業大学, 生命理工学院, 教授
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研究期間 (年度) |
2017 – 2020
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キーワード | 固体NMR / 高分解能化 / タンパク質 / アミロイド / 超高速MAS |
研究実績の概要 |
本研究では、構造生物学の分野で近年進展が著しい固体NMRの次世代測定法開発とアミロイド構造生物学への応用を3つの課題を通して行う。NMR法の根本的問題である感度と分解能の問題を解決するため、(1)超高速MAS法を使った微量生体試料観測のための高磁場固体NMR法と(2)分解能向上のための高次元固体NMR法を開発する。課題(1)では、高磁場下での感度増加法を開発し、現在は検出限界以下である数nmo1の試料での測定を可能とする。課題(2)では、解析が困難な300残基以上のタンパク質に対する信号帰属と構造測定法を開発する。更に、(3)アルツハイマー病に関連したアミロイドとリガンド分子の相互作用の構造生物学を確立する。毒性を示す繊維状Aβ42アミロイドと薬剤候補となる抗体や小分子リガンドとの結合部位とモードを調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分解能向上と構造測定と側鎖の信号の帰属-5次元(5D)固体NMR法を現実的に行えるパルス系列を開発し、世界で初めて5D固体NMR実験をモデルタンパク質であるGB1(分子量~6.5kDa)に対して行った。従来4次元(4D)固体NMRであっても数日かかっていたが、5D実験を1日程度で測定可能であることを示した。4D固体NMRはわずか1時間程度で測定可能で、連鎖帰属のための様々な4D実験が短い時間で完了できる。成果をまとめた論文は投稿済みで、現在論文の改訂中。 アミロイドや膜タンパク質に対する分解能向上-アミロイドや膜タンパク等はほぼ単一の二次構造から成るため、信号が同じ位置に重なり連鎖帰属が困難になる。Aβ42フィブリルでは6つのValの信号が重なり、連鎖帰属が不可能だったが、Val-reverseラベルしたAβ42に対しHIGHLIGHT 3D CaNH法でValの次の残基を観測できることを示している。この結果を元に上記で述べた4D連鎖帰属法と組み合わせ、Valを迂回しての連鎖帰属が可能となることを示し、ほとんど主鎖の^<13>C, ^<15>N, ^1H信号を帰属した。現在中性のpHではAβ42フィブリルの構造は本質的に1種類しか見つかっていないが、信号機属よりシフトが大きく異なる新規構造の存在を示す結果が中性下で作成された試料で得られた。現在成果の論文化を進めている。また提案する実験のためにSPAと呼ばれるアミロイドの中間体も作成している(JBC 2020)。さらに、バクテリア由来の膜タンパクであるaquaporin-G(分子量23万)に対する4D固体NMR測定も進めている。これに関しては試料の最適化による分解能の向上を図っている。HIGHLIGHT法による関しても適用予定。アミロイドと薬材Complexへの応用―抗体等を含む非ラベルの試料がアミロイドの結合パートナーの時には、パートナー側の^1Hの信号とアミロイドの信号を分離することは難しい。この場合にはアミロイドを^<13>C、^<15>N均一ラベルして、^<13>Cと^<15>Nに結合している^1Hの信号を全てクエンチする。抗体由来の^1Hからアミロイドの^<13>Cに信号を移動して観測を行う。観測されたアミロイドの^<13>Cの信号から抗体のエピトープ等に対応するアミロイド部位が同定できる。このコンセプトを実証するための実験をアミロイドの凝集を妨げる効果がある小分子薬材であるカテキンEGCGとAβ42フィブリルのcomplexに対して行っている。また、EGCGの結合により複数存在するアミロイドの構造のpopulationがシフトする興味深い現象を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初目標としていた結果を達成したので、上記で述べたプロジェクトの成果をまとめて論文化するための追加実験を主に行う予定。アミロイドと薬材Complexの実験については抗体試料に対するComplexを作成して実験を行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中、準備している投稿予定論文(計3本)を仕上げるための追加実験を予定しているが、コロナウイルス感染症の対応のため実験が遅れている。特にReviewerからの要請や論文の原稿を仕上げる際に必要になった追加実験や再現実験を行う予定である。また、論文がアクセプトされていないためまた未公表であった成果を国際学会や国内学会等で発表する予定である。更に、可能であれば関連した追加の実験を行う予定である。
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