本研究課題では、神経スパイク情報伝達バスの基礎技術の構築を行った。神経スパイクを用いて通信を行う様々な装置(シリコン神経ネットワーク、神経ネットワークのソフトウェアシミュレータ、神経生理学実験機器など)同士をシームレスに接続できるバス規格を定義することにより、次世代人工知能技術として期待されているニューロモルフィックシステムの発展に寄与することが目的である。このため、実装方式(アナログ、デジタル、ソフトウェアシミュレーションなど)やモデルの粒度(マルチコンパートメンタルモデル、シングルセルモデル、統計的モデルなど)に依存しないバスプロトコル仕様を定義することが重要である。本研究期間中、特に物理層と論理層が独立するよう注意しながら仕様定義を行い、リファレンスデザインとして、イーサネットを物理層としてFPGAチップ上のシリコン神経ネットワーク同士、及びデジタルコンピュータ上のソフトウェアシミュレータとの接続が可能な回路の設計を行った。 また、渡航先研究機関では古くから神経組織から情報を取り出す多電極アレイ(MEA)のインターフェースの研究を行っていたため、MEAデバイスとの接続についても検討することも考えていたが、渡航先研究機関の都合にてプロトコル仕様策定にあたって考慮に入れることができなかった。しかし、渡航先研究機関では近年、メムリスティブデバイスの研究を始めており、現行AI向け「シナプス」への応用と並行し、神経振動子回路への応用も検討していた。そこで、神経振動子回路の理論モデル設計を行って特性評価し、プロトコル仕様策定にあたって考慮に入れ、仕様の汎用性を高めた。 本研究終了後は、本研究期間中の成果を元に、リファレンスデザイン回路を発展させ、USB物理層やLVDSなどを物理層に用いたデザインなどを作成、アナログシリコン神経ネットワークチップとの接続などを目指す。
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