研究課題/領域番号 |
15KK0007
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 正人 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (40342836)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 測定型量子計算 / グラフ状態 / 自己検証 |
研究実績の概要 |
本年度は,シンガポール国立大学のMichal Hajdusek博士と共同で,グラフ状態の自己検証の方式を提案することができた.グラフ状態は,グラフの形から定まる巨大なエンタングル状態であり,これが準備されると,各qubitでの測定のみから量子計算が可能であることが知られている.このような量子計算のスキームは測定型量子計算とよばれている. 過去の林らの研究により,各qubitの測定器が正しく機能する前提で,グラフ状態を検証する方法は知られていた.自己検証とは,各qubitの測定器と検証対象となるグラフ状態の双方について,正しいものであることが保証されていない場合に,それらを動作させることで,正しいものであることを検証する方法である. 本研究では,研究の第1段階で,ベル状態とqubitの測定器の候補が与えられた場合に, これまでよりも効果的に,ベル状態とqubitの測定器の双方を検証する方法を提案した. 一般に,自己検証のためには,同じ方法で生成されたベル状態の候補対して候補となるqubitの測定器にかける操作を複数回行う必要がある.従来法ではCHSH test を用いていたが,この方法では,検証のための反復回数が多いのが難点であった.本研究では,スタビライザーtest とCHSH testを組み合わせることで,この反復回数を減らすことに成功した.なお,スタビライザーtest だけでは,自己検証はできないので,両者を適切に組みあわせることがポイントである.さらに次のステップではこれを一般のグラフ状態とqubitの測定器の場合に拡張した.ここでは,適切に検証方法を設計することで,一般のグラフ状態の場合での自己検証をベル状態の場合の自己検証に帰着させた. さらに,これの成果を測定型量子計算に適用することで極めて弱い設定で極めて効果的に量子計算の計算結果を保証するための方法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では,自己検証を行う際,対象となるグラフ状態の候補となる複数の系の状態にに対して,独立性条件を課すことを考えていた.しかし,当初の予想に反して,独立性条件を排除しても自己検証が可能となることが分かった.これは我々の大きな成果の1つである.また,今回の成果は海外で反響があり,多くの国際会議で発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後,より必要となるqubit系の測定器の種類が少ない方法を検討し,自己検証のためのコストを下げる方法を検討する.また,関連する量子プロトコルなど,本成果を活用する方向についても検討する.
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