本年度の研究では,測定装置が信頼できる場合について,より緻密に量子状態の検証を扱った.従来研究では,個別の純粋状態の検証に関して,具体的な検証方法が提案されているにすぎず,一般論の枠組みでの量子状態の検証についての最適化は十分になされていなかった.本研究では,一般の純粋状態の検証において,ある条件を満たすランダム化された測定を用いて検証を行う場合に,どのように組み合わせれば,所望の優位水準を満たす検証方法が構成できるか考え,その最適化を行った.さらにその手法をハイパーグラフ状態の検証に応用した.ハイパーグラフ状態は,測定型量子計算を行うための資源として知られている.あるハイパーグラフ状態を用いた測定型量子計算の計算結果を検証する場合,そのハイパーグラフ状態の精度を検証することが不可欠である. さらに,最大エンタングル状態とは限らない一般の純粋状態の検証には,双方向の通信を用いることで性能が向上することを明らかにした. また,測定型量子計算とは別に,多体のGHZ状態を用いることで,modulo和の秘匿多者間量子計算の方法を提案した.最初に,modulo和の秘匿多者間計算を行うことと,ある条件を満たすmodulo和がゼロとなる乱数の組を生成することが等価となることを示した.そして,多体のGHZ状態において,位相基底で測った場合,その方法で得られる乱数が上記の乱数となることことを示した.この方法における秘匿性を保証するために,GHZ状態の自己検証の方法についても提案した.Michal Hajdusekはシンガポール国立大学を退職したため,シンガポール国立大学での国際共同研究は今年度実施しなかった.Man-Hong Yung博士は南方科技大学を休職したため,南方科技大学での国際共同研究の相手はWang Kun博士に変更した.
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