研究実績の概要 |
本研究では、日常生活技能の獲得に困難を抱えている子どもの「探索活動」を自然に促す支援について検討した。筆者は2016年3月28日から2017年3月16日までハーヴァード大学Wyss Institute for Biologically Inspired EngineeringにVisiting Scholarとして研究滞在し、同研究所のGoldfield博士と共同研究を行った。日常生活技能のなかでも、特に0~1歳の乳児の自律的な摂食行動(self-feeding)場面、および自律的な歩行場面において、母親が乳児の周囲の状況をどのように調整しているのかを検討した。研究の成果としてGoldfield博士と共著執筆した研究論文が国際学術ジャーナルEcological Psychologyにて2018年3月に公刊された(Nonaka, T., & Goldfield, E. C. (2018). Mother-infant interaction in the emergence of a tool-using skill at mealtime: A process of affordance selection. Ecological Psychology)。同論文では、乳児が道具を目的に向けて使用する以前に探索的な道具使用が長期間見られること、さらにこうした非合目的的な探索的な道具使用を許容し、促すような状況を母親が周囲に作っていることを母子の共同行為の詳細な記述とともに報告した。歩行技能の支援に向けた研究では、歩き始めて間もない乳児の歩行を援助する母親が乳児を支えている手を離すタイミングと乳児の身体運動協調との関係を調べ、左右の重心の揺れを抑えることに向けた運動協調の創発が、母親が手を離すタイミングと相関しているという予備的な結果が得られ、今後の検討に向けた道筋が得られた。
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