研究課題/領域番号 |
15KK0015
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊藤 一之 法政大学, 理工学部, 教授 (90346411)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ソフトロボット / 柔軟ロボット / 多脚ロボット |
研究実績の概要 |
生物は,数少ない経験から未知の多数の事象に適用可能な汎化された振る舞いを構成することができる.これは,高等生物だけではなく,小動物や昆虫などの 下等生物にもみられる極めて優れた性質であり,従来の工学における「多数の事象から少数の抽象化された事象を抜き出す」という統計学的な枠組みでは説明が 不可能な対照的な現象である. この生物の仕組みに注目し,本研究では,「汎化機能を実現しているものは,実世界に最初から存在している普遍的性質である」との仮説をたて,この「普遍的性質を発見し汎化を実現するためのプロセス」と,「学習により状態・行動空間を分化させ,振る舞いの精度を向上させてゆくプロセス」の2つのプロセスからなる新しい学習の枠組みを提案した. 29年度は,イギリス ブリストル大学 ロボティクス研究所 ソフトロボットグループと共同で,全身のほぼ全てが柔軟な素材で構成された多自由度ロボットを開発し,その有用性を実験により確認した. 開発したロボットは,シリコンを成形することにより実現されており,身体の形状やシリコンの硬度などの物理特性を設計パラメータとし,身体と環境との相互作用により受動的に適応的な振る舞いを生成する仕組みとなっている. 具体例の一つとして、タコの振る舞いヒントとした多脚ロボットの実現を目標に、自然状態(外部から力を加えていない状態)が螺旋状となる柔軟脚を開発し、タコと同様の振る舞いが受動的に生成されるとともに、未知形状物の把持、並びに、未知形状の柱の昇降が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,イギリス ブリストルロボット研究所に客員研究員として1年間滞在し,共同研究を行った.また、その過程で,ソフトロボットを実現するための技術を習得した. 現在は,イギリスでの研究を終了し,日本に帰国しており,日本側の研究設備を整える作業を行っている。最終年度中には,ソフトロボットを製作するために必要な工程の全てを日本で実施可能な状態となる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
早急に,日本側の研究設備を整え,日本側だけでも,ソフトロボットを製作するために必要な工程の全てを実施可能な状態にする予定である. これと並行して,これまで得られた知見をもとに複数のロボットを製作し,実験により,理論的枠組みの妥当性,並びに,実現したロボットの有用性を検証し,学会発表,学術論文などで成果を公表していく予定である.
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