データの相互変換は情報システムにおける重要な操作であるが、双方向変換は、その変換をこえて双方向に更新を伝播させることができるため、設計から実装までの工程をモデル変換で実現するモデル駆動開発に於いて、下流での修正の上流への伝播を実現する枠組として期待されている。 本研究は、代表者が双方向グラフ変換言語をモデル(=グラフ)駆動開発に応用してきた過程で直面した実用上の問題を相互運用性の切口で捉え、より明快で強力な双方向変換の枠組を提案しようとする基課題における複数のサブテーマ中「双方向変換システムの他のシステムと対等で相補的な統合」の強化により、実用的な双方向変換方式を開拓するものである。 2016年度は、前年度までに提案した、単方向変換言語から双方向変換言語への部分翻訳に基づく部分双方向変換手法について、単方向変換言語処理系と双方向変換言語処理系の統合実行による統合処理系が全体としてラウンドトリップ性を示すための十分条件を証明し、単方向モデル変換言語ATLから双方向(化された)グラフ変換言語UnQLへの部分翻訳もその具体例となることを示し、国際学術雑誌に投稿し、実装を公開した。更に、上記部分翻訳系を系統的に構築する道筋を示した。 2017年度は、上述の十分条件のうちのひとつである単方向変換言語の加法性について、query containmentと変換の間の包含関係との間の関係、包含関係がなす束、単調性と文脈を用いた加法性抽出法などをまとめた研究論文を国際会議で発表した。 本年度は、 上記国際雑誌の査読結果に基づき論文の改訂を進めた。特に、枝ラベルグラフとEMFモデルとの技術空間間変換の条件の明確化、dangling参照を考慮したモデル間の包含関係の明確化について検討した。更に、本研究の成果を踏まえ、本研究で注力した部分双方向化から、それを一般化した漸進的双方向化について検討した。
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