研究課題
最近、訪問先(ドイツ)の研究チームによる数値モデリングの研究結果により、北極海(特に、ラプテフ海)での一次生産が光環境に強く制限されている可能性が示された。その結果を受け、本年度に研究代表者は衛星観測によって北極海の有光層深度を推定しその原因を探った。その結果、北極海の多くの海域で、有光層深度は主に他の海洋と同様に太陽高度に強く依存して変動するという傾向がみられたものの、ラプテフ海については、加えて特異的な変動が見られた。その変動を解析したところ、ラプテフ海では水中の有色溶存有機炭素(CDOM)(CDOM吸収係数を指標とする)および濁度(懸濁粒子後方散乱を指標とする)が有光層深度の変化に強く影響していたが、他の北極海域ではその影響は顕著ではなかった。実際、衛星観測によると、ラプテフ海ではCDOM吸収や懸濁粒子散乱が他の北極海よりも格段に高かった。このように、ラプテフ海の有光層深度は2つの変動モード(太陽高度の変化、水質の変化)により駆動されていることがわかった。一方で、CDOMは光合成に必要な光を吸収することから、高いCDOM吸収があるラプテフ海における植物プランクトンの一次生産は、CDOMによると光吸収により制限されている可能性が示唆された。衛星観測された群集構造では、ラプテフ海ではマイクロプランクトンが極めて優占していたため、多様性は低いものと考えられた。以上の結果は、訪問先の数値モデリングによる研究結果と整合的であることが示された。
2017年6月13日-2017年9月11日まで、アゴスティーノメリコ教授の所属先(渡航先所属機関に相当)を要修正。誤)ブレーメン大学(ドイツ・ブレーメン) ---> 正)The Leibniz Centre for Tropical Marine Research (ZMT)及びヤコブス大学(共にドイツ・ブレーメン)。
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Frontiers in Marine Science
巻: 6 ページ: -
10.3389/fmars.2019.00485
IEEE International Geoscience and Remote Sensing Symposium
巻: - ページ: 4741-4744
10.1109/IGARSS.2019.8899897