気候変動による,生態系への影響が懸念されている。気候変動に伴って生物多様性が影響を受けると、結果として生態系の機能性にも影響が波及することが考えられる。生態系に生じる極端現象としては,たとえば旱魃,火事,虫の大発生などが挙げられる。これらは社会的に災害となり得る一方で,自然界には普遍的に生じる事象である(「自然撹乱」と呼ばれる)。現在,生態系の撹乱イベントは,土地利用や気候の変化といった人為と自然要因の相互作用により複雑化している。 本課題では,撹乱体制の変化によって生物多様性が変化・変性することにより,機能的役割とくに機能的冗長性が失われる可能性を検証する。そこで,ウィーン天然資源大学のDr. Rupert Seidlと協働して,「気候変動―生態系改変―多様性/冗長性変化」の相互関係の変化予測を行う。具体的には、生物多様性の変化予測を陸域生態系モデルにより構築する。さらに、森林撹乱-動態モデルを用いて,気候変動シナリオに応じた森林の多様性―生産性の変化に撹乱の効果を加味したモデルを構築する。これにより,将来的な多様性の変化シナリオに基づく陸域生態系の機能性(炭素隔離など)の応答予測を行う。以上より,気候変動下における生態系の機能性と冗長性を担保し,緩和策と適応策に貢献する上での生物多様性の潜在的な役割を評価する。 以上を実施するための確認や準備等を行った。研究候補地に適したパラメータの取得やモデルの詳細の確認などを昨年度より継続して行ってきた。さらに、理論的な進展のために、意見論文の作成も行った(2018年出版)。より発展的なテーマとしては、世界規模での撹乱―陸域生態系変化のメタ解析も実施している(2018年出版)。
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