現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はカリフォルニア大学デービス校Christoph Vogel博士の下で研究を遂行した。まずヒトモノサイト細胞株THP-1をマクロファージ様に分化させ、強力かつ特異的なAhR Aryl Hydrocarbon Receptor(AhR)アゴニストである2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)で刺激して、酸化ストレスに関与する遺伝子の発現変化を網羅的に解析した。その結果、TCDDによりNADPH oxidaseサブユニットの1つであり、NADPH oxidase活性を制御するp47phoxの発現が大きく上昇することが明らかとなった。p47phoxの発現誘導はTCDD以外のAhRアゴニストでも生じた。このとき、細胞が産生するスーパーオキシド量を測定すると、AhR刺激によりスーパーオキシド量が大きく増大し、この増大はAhRノックアウトマウスから調製した骨髄由来マクロファージでは起こらなかった。ヒトp47phoxのプロモーター解析を行なったところ、転写開始点の上流3,000bpまでにdioxin-response element(DRE)が2つ同定された。ChIP assayの結果、AhRはこの2つのDREにリクルートされることが明らかとなった。従って、p47phoxはAhRにより直接、発現制御を受けること、AhR刺激による酸化ストレスは、p47phoxの発現増大に起因することが示唆された。 また、THP-1マクロファージをリポポリサッカリド(LPS)で刺激すると、AhRの発現が上昇した。このことは、炎症状態にあるマクロファージはAhRの発現が亢進している、つまり化学物質に対する感受性が上昇していることを示唆している。 以上、AhRの標的が同定できたことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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