ドイツおよびオランダとこれまでに行った実験の解析および論文作成を行った。ドイツでは珪藻にツボカビが寄生することがバクテリアの量や種組成に与える影響について実験を行った。バクテリアの種組成はツボカビの有無によって異なり、さらに珪藻の状態(培養日数)によって異なることが明らかとなった。ツボカビは珪藻の状態を変化させることでバクテリアに影響を与えていることが示唆された。また、ドイツの共同研究者らと湖沼や海洋、河川や人工環境など水域生態系に生息する菌類について、総説にまとめた(Grossart et al. 2019)。 オランダでは水温、栄養塩濃度、動物プランクトンがツボカビなど菌類群集に与える影響を3つの湖沼で検証した。菌類群集は湖沼によって明瞭に異なり、栄養塩が影響を与えるほか、動物プランクトンの影響が顕著に出る湖もあった。また、動物プランクトンのワムシがツボカビの寄生率に与える影響を実験的に検証した。ワムシはツボカビを捕食するがツボカビの藍藻に対する寄生率は減少させないことが判明した。数理モデル解析により、ワムシはツボカビを餌源とする限り、餌を極端に減少させることができないため、寄生率に影響を与えないことが明らかになった。これらの結果を論文としてまとめ投稿中である。さらに、珪藻からツボカビ、ワムシへと物質がどの程度流れるのかを、炭素窒素安定同位体比を使って検証した。自然条件下での同位体比では明瞭な傾向は見られなかった一方、珪藻を安定同位体でラベルしたものでは、ツボカビやワムシへの炭素窒素の移行が検出することができた。これらの結果を論文としてまとめ投稿中である。
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