研究実績の概要 |
今年度は、前年度から進めてきた共同研究プロジェクトの具体的な成果が多く出た1年であった。「化学物質の生理活性評価」である全体課題に資する以下の3つのサブ課題研究を遂行した。 サブ目標(1)の研究では、Through-Bond Energy Transfer (TBET)の原理に基づいて、Cy5蛍光色素と発光基質を共有結合で繋げた新規発光分子を合成した(ChemBioChem,2019,20-8,p1-3,201)。また、発光基質に各種蛍光色素を繋げた新規発光基質を合成し、各種発光酵素に選択的に発光する特色があることを見出した(Bioconjugate Chem,29,pp.A-J,2018)。その理由は、基質の官能基が立体障害を引き起こした結果だと考察される。 サブ目標(2)の研究として、免疫毒性の化学物質に応答するin vitro発光プローブを開発した(Anal Sci,2019,35,71-78)。またレチノイン酸系列の催奇形性化学物質に応答する発光プローブも開発できた(ACS Comb Sci,2019,in press)。他にも一分子内に発光エネルギーが蛍光に移る現象(BRET)を用いた分子プローブの開発にも成功した(Anal Chem 2019,revision)。 サブ目標(3)の研究として、青色から近赤外線領域(NIR)へのエネルギー移動(BRET)する発光プローブを開発し、このプローブを用いて組織透過性の優れた生体イメージングができた(Theranostics,2019,9(9),2646)。このような技術を基に女性ホルモンやホルモン様化学物質の活性を評価する新規一分子型型発光プローブを開発できた。 これからの研究成果は、小分子化合物を対象にそれより想定される様々な生理活性(毒性、催奇形性)をより高速かつ高感度で定量可視化する発光プラットフォームが形成できた。
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