研究課題/領域番号 |
15KK0031
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 千島列島 / カムチャツカ / 千島アイヌ / 考古学 |
研究実績の概要 |
ワシントン大学では,人類学部に保管されている千島列島全域から回収された石器(剥片類)の分析を行った。黒曜石製の剥片については,製作技術の変遷解明を目的として,打撃の剥離速度に関する情報をえることができるフラクチャーウイング分析を実施した。剥片のうち圧倒的多数を占める非黒曜石製石器(安山岩製,チャート製など)については,石器の利用法や資源利用に関する情報収集を目的として石器使用痕分析を実施した。まず全資料の重量を計測し,長さまたは幅が4㎝以上の剥片を選択したうえで(1814点),微小剥離痕を有する資料118点について金属顕微鏡による石器使用痕分析を行った。 ワシントン大学内にあるバーク博物館には,千島列島全域から回収された3万点以上の動物骨が保管されており,すべての資料についてリストと対照して存否・状態などを確認した。本研究において重要な意味を有しているラッコ,イヌ,ヒグマ,ライチョウについては,すでにDNA分析や安定同位体比分析などのために失われている若干の資料をのぞいて,現存しているすべての骨の三次元スキャンを実施した。このほか,将来的に各種分析に利用する可能性が高い保存状態の良好な海獣類・ワシタカ類・アホウドリ・マダラ,加工痕のある海獣類などについても三次元スキャンを実施した。スキャンした動物骨の総数は,1063点である。 ロシア科学アカデミー極東支部東北学際研究所においては,南カムチャツカ最大の考古資料コレクションであるジコヴァ・コレクションに含まれるすべての石器についてカタログ作成を行ったのち,黒曜石製石器について上記と同様にフラクチャーウイング分析を実施した。これにより,石器製作の時間的変化を,千島列島とカムチャツカ半島で比較するための情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ,ロシアに保管されている資料について,すべて予定通り分析を終了することができた。現地においては,複数回にわたって分析の中間報告を行い,共同研究者と議論をおこなうことで分析結果の評価と今後の方向性についての合意を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
石器の分析結果については,フラクチャーウイング,使用痕分析ともに分析結果のまとめがほぼ終了しているため,石器の製作技術と使用からみた千島アイヌの経済変化の有無について論文をまとめる。 動物骨については,資料の概要をチェックできたため本格的な組成分析を開始するとともに,三次元データをもちいてイヌの形質的特徴やラッコの体長復元を実施する。こうした分析を通して,千島アイヌ文化期のなかで動物利用に差があるかどうかだけでなく,その前の考古学的文化(続縄文文化,オホーツク文化)と千島アイヌ文化期のあいだに資源利用の違いがあるかどうかも考察する。 なお,今後の資料の活用のため,ジコヴァ・コレクションに含まれるカムチャツカ半島出土の石器・骨角器・土器資料については資料目録を刊行する。
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