2017年度よりひきつづき,2018年度も米国ワシントン大学人類学部に滞在し,2018年4月4日に帰国した。滞在中は,千島列島出土動物骨の三次元スキャンデータおよび石器の観察データ(顕微鏡写真,表など)の最終チェックを行った。帰国後は,収集した動物骨の情報について,千島列島内の島ごと,あるいは時期ごとに集計する作業を実施した。これにより,千島列島内で利用されていた動物種の空間的・時間的な差異を明らかにするとともに,カムチャツカ半島から移入された動物の有無や量についても把握することができた。また,ラッコなど主要な動物種の骨については,スキャンデータをもちいてサイズ計測を行い,狩猟圧の有無などを推定するための手がかりをえるなど,共同研究の成果発表にむけての基礎的な情報整備をおこなった。 千島列島出土石器の分析結果についても,島ごと,時期ごとの集計と統計的な解析を実施した。これにより,黒曜石と非黒曜石の利用状況や,剥片剥離技術の違いに関する空間的・時間的差異を把握し,共同研究の成果発表に向けて論文執筆に着手したところである。 ロシア・マガダンに保管されているカムチャツカ出土石器については,アメリカに保管されている石器のデータとあわせて分析を行い,論文執筆に着手した。また,関係するコレクションについては,石器のみならず土器・骨角器をもふくめた資料カタログを刊行し,今後,世界中の研究者にとって利用しやすい環境を整備した。 研究期間全体を通じて,アメリカに保管されている千島列島全域から回収された動物骨・石器,およびマガダンに保管されているカムチャツカ半島出土石器の全体像が明らかになった。今後は,これらの情報を活用して,千島列島における動物利用の変化やカムチャツカ半島に由来する資源の利用に関わる研究成果をまとめる予定である。
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