研究課題
2017年3月から8月までスペイン・Santiago de Compostela大学に滞在し、Marta Dominguez-DelmasおよびIgnacio Garcia-Gonzalezと、日本産ヒノキ科樹木の木材産地推定について年輪年代学手法を用いて検討を行った。まず、一部のサイトでは標準年輪曲線が未確立であったため、年輪幅の計測を実施し、全データの再度のクロスデーティングを経て、最終的に19サイトで現生年輪試料の標準年輪曲線(152年~310年長)を構築した。これらを対象に、この標準曲線間のt値を総当たりで算出したところ、各地域集団内(例えば東北北部など)の曲線間でt値が高くなる傾向が認められ、地理的・気候的区分に従って年輪幅変動が類似していることが明らかとなった。主成分分析の結果も同様に、地域集団ごとにグループ化が可能であった。主成分負荷量から各主成分は各地の地理的・気候的特徴を表していると推定された。クラスター分析でも、各サイトの標準年輪曲線は地域集団ごとにクラスターを形成することが示された。以上の結果から、年輪幅変動は、樹種や標高ではなく、地理的・気候的区分に従って類似していることが明らかになり、我が国においても木材産地推定が可能であることが示された。さらに、全個体を対象としたクラスター分析を行ったところ、ほとんどの個体がサイトごとにクラスターを形成した。そのため、地域集団内の比較的近接したサイト間でも木材産地推定が行える可能性があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
木材産地推定において不可欠な地域間の年輪幅変動の類似性については、3種類の解析を行ったことで、一定の結論を得るに至った。この内容については、学会発表を行うとともに、現在、論文の執筆を進めており、予定通り進捗していると評価できる。
現在、現生試料の酸素安定同位体比の測定を進めているが、引き続き着実に試料作製と測定を実施してデータを蓄積し、年輪幅と同様の解析を行って地域間類似を検討する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
考古学と自然科学
巻: 76 ページ: 15~35
沖縄県立博物館・美術館, 博物館紀要
巻: 11 ページ: 67~110
Quaternary International
巻: 455 ページ: 1~7
10.1016/j.quaint.2017.06.020