インド密教儀礼研究において最も重要と目される文献の一つディーパンカラバドラ著「秘密集会曼荼羅儀軌『四百五十頌』(『世間光』)」について、従来のゲッティンゲン大学所蔵本に加えて、新たに発見されたケンブリッジ大学所蔵本にもとづき、さらにラトナーカラシャーンティ・ヴィドヤーパーダ(ヴィタパーダ)の両注を対照し「前段階の奉仕儀軌」の部分について、梵文・蔵訳校訂テキストと訳注を制定した。 原稿の作成にあたっては、共同研究者であるハルナガ・アイザックソン教授(ハンブルク大学)に加えて、『四百五十頌』「灌頂儀軌」部分の研究を進めている張思睿氏の助言を得た。アイザックソン教授と張思睿氏とは、著者不明の『四百五十頌』梵文注釈断片についても解析を行なっており、校訂テキストと訳注を共同で出版するよう準備を進めているところである。さらに、最近梵文・蔵訳バイリンガル写本が発見された『アームナーヤマンジャリー』をはじめとするアバヤーカラグプタの著作を中心に、回収されうる限りのラトナーカラシャーンティ注の梵文断片について取りまとめを行なった。 以上の研究成果をまとめて書籍のかたちで出版できるよう準備を進めている。全体の内容項目は以下のとおり:1)イントロダクション、2)『四百五十頌』「前段階の奉仕儀軌」梵文・蔵訳校訂テキストならびにラトナーカラシャーンティ・ヴィタパーダ両注当該部分蔵訳校訂テキスト、3)『四百五十頌』「前段階の奉仕儀軌」ならびにラトナーカラシャーンティ注当該部分訳注、4)附論1『ヴァジュラーヴァリー』『ニシュパンナヨーガーヴァリー』関連部分梵文・蔵訳テキストならびに訳注、附論2『アームナーヤマンジャリー』関連部分梵文・蔵訳テキストならびに訳注、5)梵文写本ならびに蔵訳伝承に関する注記、6)略号および参照文献、7)梵蔵対照原語・術語・一般語索引。
|