研究実績の概要 |
オックスフォード大学での研究の二年目には、Enlightenment Workshopに参加し、啓蒙期の歴史、思想、政治を専門とする研究者と交流を行った。中国史研究者がヨーロッパ啓蒙期研究にどう切り込んでいくのかが常に課題となったが、一方で、ヨーロッパの他者としての中国像が啓蒙期研究の中に見出されたことは収穫であった。ここから『趙氏孤児』の翻案に、他者なる中国と内なる中国という、二つの中国像を軸に思考することが今後の研究にとって必要であることが理解された。。 また、ヨーロッパの中国研究者との交流も進み、3つの研究に関して共同での発表や研究を準備することができた。ひとつは"Sino-Japanese (Anti-Japanese) War and Its Memory: Family, Comunity and Competing Nationalism"と題する国際学会での発表である。日中戦争の対日協力者を中心テーマとし、日中韓の研究者と英語で発表するもので、アジアにおける戦争記憶の問題をより広い世界に向けて発信する。次に、モダンアート研究者と「歌と記憶」に関する共同研究を議論し、空間・時間概念を取り込んだ共同での論文執筆を構想している。そして、中国における「歌と歴史」について、中国女性史研究者と共同研究を構想している。中国のムスリム女性が歴史を伝える歌と、中国農民が村の歴史を歌う歌を比較することで、歴史と歴史理論の双方において新しい発見が期待される。 論文執筆として、「戦争記憶を巡る再帰的な歴史実践-オーラルヒストリーによる他者理解と自己理解」が、菅豊著『パブリック・ヒストリー入門』に収録・発刊された。また、2020年8月にドイツで開催される国際学会European Association for Chinese Studies (EACS)での発表を投稿し採択された。
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