研究課題
本研究は、基課題を格段に発展させるために、「近世アジアのモノからみたグローバル・ヒストリー:生産・国際流通・消費文化」を実質的な課題として研究を進めることとした。すなわち、基課題が「砂糖」のみを対象としていたのに対し、本研究では、「綿織物」「胡椒」「錫」等も対象に加える。これらの産品は近世の海域アジア(東アジアから西アジアまでの海のアジア)で多量に生産されていた。ヨーロッパ各国が欧州市場のためにアジアから持ち出すばかりではなく、アジア商人によっても取引され、ヨーロッパやアジアなどの生産地とは遠く離れた地においても消費されていたのである。研究代表者がかつて博士論文で研究した「銅」、基課題で研究中の「砂糖」に、これら商品の生産・流通・消費を加えることで、複合的な視点から近世海域アジアならびに世界の商品連鎖を分析し、アジアから見た実証的なグローバル・ヒストリーを構築することを試みるものであるといえよう。具体的な研究としては、基礎的データをオランダ国立公文書館が所蔵するオランダ東インド会社文書を用いて収集した。まずオランダ東インド会社ないしは他の商業集団による貿易数量データを集め、その上で、オランダ東インド会社文書から生産と消費に関する基礎的(数量ならびに文字)データを収集した。とくに2017年度は、2017年4月から9月にかけてオランダのライデン大学に滞在して、研究を実施した。日本の本務校側からは特別研究期間(いわゆるサバティカル)の適用を受けた。また、ライデン大学のもつ国際的な研究ネットワークを利用して、ナポリ東洋大学との共同研究をも進めることとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、2017年4月から9月にかけて、オランダのライデン大学に滞在し、自らの研究を先方と共同で進めることができた。
2018年度後半に、ライデン大学等から研究者を東京大学に招き、国際研究集会を開催し、本国際共同研究のとりまとめを実施する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
A.J.H. Latham and Heita Kawakatsu (eds.), Asia and the History of the International Economy: Essays in Memory of Peter Mathias, London and New York: Routledge
巻: - ページ: 57-71
The Newsletter, The International Institute of Asian Studies (IIAS)
巻: 79 ページ: 36-37
荒野泰典編『近世日本の国際関係と言説』溪水社
巻: - ページ: 187-205
川分圭子・玉木俊明編『商業と異文化の接触―中世後期から近代におけるヨーロッパ国際商業の生成と展開―』吉田書店
巻: - ページ: 777-798
羽田正編『グローバル・ヒストリーの可能性』山川出版社
巻: - ページ: 287-303