研究課題
本研究は、基課題を格段に発展させるために、「近世アジアのモノからみたグローバル・ヒストリー:生産・国際流通・消費文化」を実質的な課題として研究を進めることとした。すなわち、基課題が「砂糖」のみを対象としていたのに対し、本研究では、「綿織物」「胡椒」「錫」等も対象に加える。これらの産品は近世の海域アジア(東アジアから西アジアまでの海のアジア)で多量に生産されていた。ヨーロッパ各国が欧州市場のためにアジアから持ち出すばかりではなく、アジア商人によっても取引され、ヨーロッパやアジアなどの生産地とは遠く離れた地においても消費されていたのである。研究代表者がかつて博士論文で研究した「銅」、基課題で研究中の「砂糖」に、これら商品の生産・流通・消費を加えることで、複合的な視点から近世海域アジアならびに世界の商品連鎖を分析し、アジアから見た実証的なグローバル・ヒストリーを構築することを試みるものであるといえよう。以上、17・18世紀を中心に、海域アジアでの貿易商品の生産や流通、消費文化の分析を行うことで、本研究は海域アジア社会の変化が1680年以後に大きく生じたことを明らかにした。それまでは生糸などの奢侈品貿易が中心あったが、17世紀末以後、砂糖をはじめ、米や銅、錫といった比較的安価な商品の貿易がアジアでは盛んになった。こうしたアジア社会の変化を近世後期におけるグローバルな同様の変化傾向と軌を一にしていたと位置付けた。
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Liu Yi-chang and Ann Heylen (eds.), Nanying History, Society and Culture V: Early Tainan Region, Tainan: The International Center of Tainan Area Humanities and Social Science Research
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