研究課題/領域番号 |
15KK0042
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井上 間従文 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (50511630)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 映像学 / 美学理論 / トランスナショナル・アメリカ研究 / 批判的東アジア研究 / 詩学 |
研究実績の概要 |
H29年度は8月15日よりUCバークレー校修辞学(rhetoric)研究科にてトリンTミンハ教授を受入教員とする国際共同研究を実質的にスタートさせた。本研究課題の大きな根幹を成す、アメリカと東アジアを横断する映像研究に関しては、韓国系アメリカ人映像作家であったテレサ・ハッキョン・チャに関する領域横断的な資料調査及び本人を知る方たちへの聞取り調査を進めた。チャと実際に交流のあった研究者やアーティスト、さらには現在活動するキュレーターなどとの聞取りから、映画、映像、パフォーマンス、オブジェクト・ポエトリー、陶芸、写真等を横断するチャの活動に関する総合的な知見を得ることができた。こうした知見を国際共同研究としてまとめることが今後の課題となる。 また本研究課題の第二の研究領域である国際的なアメリカ/沖縄研究に関しても、着実な成果を挙げている。米軍統治下かつベトナム戦争が進行していた1960年代沖縄におけるシュルレアリスムとマルクス主義が文学にもたらした影響に関しては、アメリカ比較文学会年次大会にて論文発表を行い、ラテンアメリカ、ロシア、アメリカにて社会運動と詩との連関を研究する学者たちと共同議論の場を行った。また同トピックではCity College of New YorkでH31年度の招へい講演が決定しており、さらに国際学会誌Inter-Asia Cultural Studiesの特集号"Bodily Memories and Aesthetic Mediations: Remnants of Colonial-Empire in East Asia"への寄稿招待を受けることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
在米研究者たちとの学際的ネットワーク構築を進めており、当初の計画以上の進展がその面ではあるとも言えるが、その成果を論文集や学会共同パネルとして結実させる作業は、今後H30年8月14日の滞在期間終了までに出来るだけ道筋を明確化することを目標としている。よって「おおむね順調」との評価が適切であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカと東アジアを横断する映像研究に関しては、近年米国の映画研究分野にて進展の著しいメディア・エコロジー研究と一定の接点を模索することが有益かと考えられるため、同分野研究者たちとバークレーを拠点として討論を行う場を設ける。このことで上記テレサ・ハッキョン・チャ等、トランスナショナルかつ複数媒体での活動を行った作家たちに関する共同研究プロジェクトの成果発表の方法がより明確化できると考える。チャに関してはアメリカ西海岸以外に在住の関係者の方からの聞取りを可能な範囲で進めることも予定している。 アメリカと沖縄とを横断する文学、芸術研究に関しては、映画作家、芸術家などのアメリカ招へいと関連させた共同シンポジウムの開催に向けて、現在準備を進めている。また本研究者個人の研究成果に活かすために、前段落で触れたメディア・エコロジー分野の理論的枠組を一部受容した執筆等を今後行う。 美学理論全体に関わる研究としては6月にNew Schoolで開催されるInstitute for Critical Social Inquiryに参加し、また同じく6月にUniversity of Campinasで開催されるthe 11th Deleuze and Guattari Studies International Conferenceにて、発表を行い、本課題の理論的支柱部分のまとめを行う。 本課題全体の成果の発表の場としてはH31年に開催される二つの学会(American Comparative Association Annual Conference、Association for Asian Studies Annual Conference)を想定しているため、各学会でのパネル実施に向けたプロポーザルの作成と参加者へのアプローチを行うこととなる。
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