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2017 年度 実施状況報告書

コーカサス新石器文化の起源:中石器遺跡の検討(国際共同研究強化)

研究課題

研究課題/領域番号 15KK0044
研究機関東海大学

研究代表者

有村 誠  東海大学, 文学部, 准教授 (90450212)

研究期間 (年度) 2016 – 2018
キーワード中石器時代 / コーカサス / アルメニア / 新石器時代
研究実績の概要

H29年度夏に東海大学とアルメニア考古学民族学研究所の合同調査として、アルメニア、アルマヴィル県において2つの先史時代遺跡の発掘調査を行った。発掘調査後、アルメニアと日本国内の両方で、出土した考古資料の分析を行った。以下、アルメニアと日本で実施した研究内容についてそれぞれ報告する。
(アルメニアでの調査研究)第1の遺跡はレルナゴーグ遺跡で、発掘調査の結果、紀元前7000年の完新世初頭(中石器時代)の遺跡であることが判明した。同遺跡の発掘調査で特筆すべきは、最下層で発見した土構造物である。全体像はまだ不明だが、円形建築の一部である可能性がある。現在のところ、アルメニアにおける最古の建築遺構であり、また紀元前7千年紀の新石器集落の起源を考えるうえでも興味深い事例である。第2の遺跡は、ノラヴァン遺跡である。発掘調査により、ジョージアのシオニ文化のものに類似した土器が発見されたことから、同遺跡は銅石器時代(紀元前5千年紀)に位置付けられる。
両遺跡の発掘調査後、出土した石器(黒曜石製石器、磨製石器)について考古学的な分析を進めた。レルナゴーグ遺跡からはアルメニアの完新世初頭遺跡に特徴的な「カムロ・トゥール」と呼ばれる特異な形態をした黒曜石製石器が多数出土した。一方、ノラヴァン遺跡から出土した黒曜石製石器は、押圧剥離技法による石刃石器がほとんどであった。両遺跡の時期差が、黒曜石製石器の石器組成の違いにあらわれていた。
(日本での調査研究)日本にレルナゴーグ出土の動物骨と年代測定用の炭化物を持ち帰った。動物骨については、総合研究大学院大学の研究者に分析を依頼し、種同定などを進めてもらっている。炭化物は、放射性炭素年代測定を行いその結果、紀元前7000~6800年頃の年代値が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通り先史時代遺跡レルナゴーグとノラヴァンの発掘調査を実施することができたので、「おおむね順調に進展」の評価とした。また、遺跡の正確な年代は、発掘調査を実施してみなければ分からないが、今回の発掘調査によりレルナゴーグ遺跡が紀元前7000年頃の遺跡であることが確実となったので、本研究の目的にかなった遺跡が発掘調査できているという点においても、プロジェクト自体は順調に進んでいると評価できる。

今後の研究の推進方策

H30年度の夏に再度レルナゴーグ遺跡の発掘調査を実施する予定である。次の調査の主目的は、前回確認された土構造物の全容を解明することである。そのために発掘調査区画を拡張して発掘を行い、この遺構に伴う考古学的記録の採取に努める。
課題としては、レルナゴーグ遺跡の保全の問題が挙げられる。同遺跡はマスタラ川沿いにあるが、現在同流域にため池を作る計画が持ち上がっており、計画が実査されると遺跡が水没する可能性が高い。レルナゴーグ遺跡はアルメニア国内で他に類例のない中石器時代遺跡であり、アルメニア側の担当省と連携して、計画の修正を求めている。計画が実行された場合でも1年以内に水没することはないが、近い将来、遺跡が水没した場合は、近隣の他の同時代遺跡において発掘調査を実施する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] アルメニアの野生コムギ種と農耕起源2018

    • 著者名/発表者名
      丹野研一・藤島文・有村誠
    • 雑誌名

      西アジア考古学

      巻: 19 ページ: 35-45

    • 査読あり
  • [学会発表] アルメニアにおける先史文化の系譜を探る―アルマヴィル地域における発掘調査(2017年)2018

    • 著者名/発表者名
      有村誠
    • 学会等名
      第25回西アジア発掘調査報告会
  • [学会発表] アルメニア完新世初頭における黒曜石石器の機能-カムロ・トゥールの使用痕分析-2017

    • 著者名/発表者名
      有村誠
    • 学会等名
      日本西アジア考古学会第22回総会・大会

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公開日: 2018-12-17  

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