最終年度には、引き続きシトー会修道院が世俗社会の形成・持続的発展に果たした役割を研究した。国際共同研究の成果として、2019年3月に海外共同研究者であるゲルト・メルヴィル、イェルク・ゾンターク、ミルコ・ブライテンシュタイン(いずれもドレスデン工科大学比較修道会史研究所)を招へいし、岡山大学(「司牧と修道制:800~1650年」)と慶應義塾大学(「日欧における中世修道制史研究の過去と現在」)で国際シンポジウムを開催した。岡山大学での成果は、2019年度内に英文論文集として、ゲルト・メルヴィルが編者を務める叢書Vita Regularisから刊行予定である。また慶應義塾大学での成果は、日本語に翻訳した上で国内学術雑誌に投稿する予定である。 さらに、2019年3月にはドイツ語単著"Orval und Himmerod. Die Zisterzienser in der mittelalterlichen Gesellschaft (bis um 1350)"を出版することができた。本書は、シトー会修道院の保護が成立する諸条件を、従来の法制史的アプローチではなく、新たに社会史的アプローチも導入することで解明したものである。 以上、最終年度に達成した成果は、本研究プロジェクトの集大成である。これらは2017年度に実施したドレスデン工科大学での研究滞在によって可能となったものであり、本研究費の趣旨に沿った研究目的が達成されたと言えよう。ドレスデン工科大学とは今後もさらに大きなプロジェクトをスタートさせる予定であり、また、国内では修道会史に携わる研究者が交流できる「修道会史研究ネットワーク」を立ち上げることができた。こうした国内外のネットワークは、今後の研究活動を中長期に支えるプラットフォームとしての役割を果たすであろう。
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