研究課題/領域番号 |
15KK0053
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
エグリントン みか 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (50632410)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | シェイクスピア / アジア / ヨーロッパ / 日本 / オリエンタリズム / オキシデンタリズム / ポストコロニアリズム / フェミニズム |
研究実績の概要 |
2017年12月に2週間渡英し、2018年3月半ばから始まるロンドン大学との国際共同研究の準備を行いながら、2018年5月に開かれる日本英文学会全国大会第一シンポジアShakespeare and British Culture since 1960 にて発表する"The Bard, Britain, and Brexit”のリサーチを、長年対立してきたイングランドとスコットランドの首都たるロンドンとエディンバラの二都市のアーカイブを使って行った。ロンドンでは、英国図書館、ローヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)、ナショナル・シアター(NT)、シェイクスピア・グローブ座(SG)の三柱に加えて、新設されたブリッジシアターで観劇した。エディンバラでは、古代から現代に至る膨大な展示物をスコットランド国立博物館、国立ギャラリー、国立図書館を訪れ、スコットランドの近代から現代に至る歴史が、いかに展示・表象・説明されているのか、EU離脱とスコットランド独立の機運が高まる昨今、現代英国の舞台芸術においてどのように表象されているかについて現地調査を行った。
2018年3月から再び1ヶ月ほど渡英し、ロンドン大学の受入研究者であるリズ・シェイファー教授とのミーティングを持ち、今後のプロジェクトの進め方について話し合いながら、リサーチを進めている。書籍出版のプロポーザルを作成しながら、先に挙げた"The Bard, Britain and Brexit"に加えて、Asia Shakespeare Association(ASA)で発表する山の手事情社の『テンペスト』論、黒澤明のシェイクスピア飜案映画についての論文(共著書籍出版予定)の調査と執筆を中心に行なった。パリに移動し、島国英国と大陸ヨーロッパの間を常に揺れてきたシェイクスピアのフランス演劇界における位置性に触れる機会ともなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多忙を極める大学学務との調整の都合で、基盤研究最終年度の冬季休暇の2週間と最終月に1ヶ月と、合計1ヶ月半の細切れの時間ながら、ようやくサバティカルを兼ねた国際共同研究に名実ともに従事できることになったため、本来の基盤研究をさらに加速させる計画が、かなり時間的にずれてしまったことは否めない。
以下の<今後の推進方策>においても触れたが、2018年4月現在から3年前に遡る2015年に作成した計画書が、時間軸のみならず、思考のトレンドといった研究を取り巻く環境や文脈にズレが生じてしまうのは、むしろ当然であろう。故に「遅れている」といった速度だけから見た評価ではなく、変化し続ける時代を背景に、当初予定していたものとは異なるルートを、異なるリズムで研究を進化ないし深化させていると考え、あえて「おおむね順調に進展している」という評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、予定通りヨーロッパとアジアの演劇祭や学会に出席しながら現地調査を行い、ロンドンを拠点に日本と英国のシェイクスピア上演研究に従事する。5月19日に東京女子大学で開かれる日本英文学会第一シンホジアにて、非英語圏のシェイクスピアの増殖と多民族国家英国のEU離脱を背景に、英国の三大劇場NT, RSC, SGの半世紀を俯瞰した‘The Bard, Britain and Brexit’を発表する。5月28-31日にマニラにおいて開催される第3回ASAにて、劇団山の手事情社の『テンペスト』公演に見る帝国と言語の表裏性を考察した‘“The Savage New World"; the Empire of Language/the Language of Empire’を発表する。加えて、9月末からイエルヴァンで開かれるアルメニア・シェイクスピア学会にて英語論文発表を行う予定である。
Brexitやトランプ政権の誕生同様に、計画書を記した2015年度の次点では予期していなかったことだが、2021度にシンガポールで開かれる5年に1度の世界シェイクスピア学会(WSC)の運営委員に選出されたこともあり、2018年後期から台北とニューヨークにも中期滞在し、第二次世界大戦前後、日本の植民地であった台湾と、日本を植民地化した米国における西洋古典に登場する女性表象を、ポストコロニアリズム、フェミニズムの視点から分析することによって、西洋/非西洋、オクシデンタリズム/オリエンタリズム、主体/従属体、男性/女性といった二項対立的なステレオタイプが、どのように揺らぐのか、あるいは揺らがないのかを分析するプロジェクトも織り込み、グローバリゼーションが加速する昨今において変貌していく「アジア」、「ヨーロッパ」、「連合王国」を、シェイクスピアという視座から捉え直した英語書籍を出版する予定である。
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