研究課題
本研究は、フランス、ケベック、日本をフィールドとして、「ライシテ」(非宗教、政教分離、世俗主義)の歴史を批判的に再検討し、宗教の公共性について考察を深め、共生社会の原理を再構成することを目指すものである。2018年度は、おもに2017年度に渡航先のモントリオールで行なった研究を継続して、以下の成果をあげた。1.ケベックと日本の比較。(1)2017年度のケベックの宗教をめぐるシンポジウムの成果を論集として刊行するために、フランス語の原稿を執筆した(2019年度中に刊行予定)。(2)ケベックの間文化主義の有力な理論家ジェラール・ブシャールと文芸評論家加藤典洋の対談を準備し実現した。当該社会の歴史的伝統を踏まえながら文化的多様性を承認する主張は、左右双方からの批判を受けるが、そのこと自体が当該社会の亀裂と断層を示している。その点に注目して検討することが、二つの社会を有効に比較する論点になることについて認識を深めた。(3)熱を帯びた現代社会の論争を扱うのに神話の研究がひとつの有効性を発揮するというジェラール・ブシャールの議論に触発され、日本をフィールドとする世俗と宗教の関係の研究に現代社会の神話の分析を取り込む研究発表と論文の執筆を行なった。2.宗教の自由(信教の自由)をめぐるフランスおよびヨーロッパと北米地域であるカナダ・ケベック州の比較。欧州人権裁判所における十字架とヴェールの扱いの違いについての論文を発表する一方で、ケベックとカナダにおける宗教の自由の近年における展開について論文にまとめたことにより、ヨーロッパと北米における宗教の自由の文脈の違いについて具体的に認識することができた。
すべて 2019 2018 2017
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 4件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (2件)
Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University
巻: 53 ページ: 157-179
アメリカ・カナダ研究
巻: 36 ページ: 39-62
思想
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ケベック研究
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