本研究は、北東アジアにおける古代から中世にかけての集団の統合、瓦解、再編の過程と周辺地域に及ぼした影響について、考古資料の検討から、実証的に跡付けることを目的とする。具体的には、靺鞨、渤海、女真を対象とし、各時代における地域集団の様相と交渉関係、次代への 承関係を考古学的に解明しようとするものである。基研究となる申請者の若手研究(A)と同様であるが、本研究では、同目的を達成する為に、関連資料が集積されているロシアの関連研究機関に滞在し、集中的に分析し、更なる研究成果の発展を行うことを目的としている。 平成29年度は、2018年2月よりロシア沿海地方のウラジオストクに渡航し、極東連邦大学に滞在し研究に従事している。同大学博物館、同大学附属渤海研究センター、またロシア科学アカデミー極東支部に収蔵されている、靺鞨前代及び靺鞨、渤海、女真期の遺跡出土資料の実見と分析を進めた。 その結果、ロシア沿海地方の靺鞨、渤海、女真に関する各時代の特徴を改めて確認することができたが、特に靺鞨成立の様相と靺鞨初期にあたる7世紀代に関する様相について、同地方での特徴と一定の地域性に関する新たな知見は重要な成果である。すなわち、6世紀代靺鞨の成立過程に関しては、沿海地方においても、より北部のアムール川流域と同様であると類推できること、但し、7世紀代の靺鞨初期においては、沿海地方においては、高句麗の影響が類推できうるという見通しを得ることができた。 現在も、研究は継続中であるが、その成果の一部は、オックスフォード大学で開催された国際シンポジウムで公表した。現在は、論文化を進めているところである。
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