本研究は、北東アジアにおける古代から中世にかけての集団の統合、瓦解、再編の過程と周辺地域に及ぼした影響について、考古資料の検討から、実証的に跡付けることを目的とする。具体的には、靺鞨、渤海、女真を対象とし、各時代における地域集団の様相と交渉関係、次代への 承関係を考古学的に解明しようとするものである。この目的は、基研究となる申請者の若手研究(A)と同様であるが、本研究では、同目的を達成する為に、関連資料が集積されているロシアの関連研究機関に滞在し、集中的に分析し、更なる研究成果の発展を行うことを目的としている。 平成29・30年度の、2018年2月~8月末まで、ロシア沿海地方のウラジオストクに渡航し、極東連邦大学に滞在し研究に従事した。同大学博物館、同大学附属渤海研究センター、またロシア科学アカデミー極東支部、ハバロフスク郷土博物館、アムール州博物館、ブラゴベシェンスク教育大学に収蔵されている、靺鞨前代及び靺鞨、渤海、女真期の遺跡出土資料の実見と分析を進めた。 その結果、ロシア沿海地方の靺鞨、渤海、女真に関する各時代の特徴を改めて確認することができた。特に、1)沿海地方における靺鞨成立期がアムール流域とほぼ同一の歩調であったこと、2)沿海地方における7世紀代の細分が可能であり、そこには高句麗の影響を見出し得る可能性を得たこと、3)アムール川西部流域が靺鞨の形成期に独自の地域性を有していること、4)にも拘らず、同地域の靺鞨期においては斉一的であること、5)但し9世紀頃から再度顕著な地域性を示すことが新たな知見として得られた。尚、アムール西部の地域性については、より西方、草原地帯の影響が考えられる。 これらの研究成果の一部は滞在中に開催された各地域の研究会で公表しており、現在、論文化を進めているところである。
|