研究課題/領域番号 |
15KK0064
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ホロコースト / ポーランド文学 / ポーランド美術 / 収容所跡地 / 記憶 / 写真 / ワルシャワ・ゲットー / 中東欧 |
研究実績の概要 |
共同研究者が主催し、ポーランド内外の専門家が参加する学際的ホロコースト研究セミナールに定期的に参加し、最新の研究動向を把握するとともに、自身の研究に対するコメントや示唆を得ることができた。1月には日本におけるホロコーストの受容を、原爆と日本の加害の受容との相関関係にとらえる報告を行い、ポーランド語論文にまとめた。ポーランド語ではこうした概観はこれまであまりなく、ホロコースト受容の比較研究の材料を提供できたと考える。 このほか、ワルシャワのユダヤ歴史研究所、ポーランド・ユダヤ人歴史博物館(通称ポリン)、ドイツ歴史研究所、イディッシュ文化センターで頻繁に開かれる国際会議や講義に参加し、新しい知見を得て、研究上の人脈を広げている。 ワルシャワ・ゲットーを専門とする共同研究者との意見交換を通して、ワルシャワ・ゲットー蜂起をめぐるポーランドにおける集合的イメージに関係するドイツ側の記録写真についての情報を得た。この写真イメージの流通を調査し、ポーランド文学における同じ場面の描写と比較し、より広いヨーロッパ的文脈にも系譜を探る研究に着手している。 ポーランドのルブリンでは、かつてのユダヤ住民の記憶を残すプロジェクトを進めるグロツカ門センターを見学し、研究者と意見交換を行った。 本研究の射程には、ポーランドに隣接する東欧・ドイツの公共空間におけるホロコーストの記念の比較調査も入る。ベルリンとパリの関連記念碑や博物館、ミュンヘン近郊のダッハウ収容所、スロヴァキアのブラチスラヴァの記念碑やユダヤ博物館、ウィーンの関連施設や博物館展示展示を調査し、近年の動向を探った。各地の図書館では資料収集も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者はホロコースト研究の第一人者として知られ、研究所内のみならず、一般に開かれた関連イベントにも頻繁に登壇し、関連研究誌の編集委員も務める。この共同研究者と密に連携が取れており、ポーランド語で口頭報告や論文を発表する機会を得た。資料の所蔵先や情報も随時教示していただき、申請時に考えていた研究テーマの方法が具体化した。 さらに、ホロコースト研究の膨大な蓄積のあるポーランドの最先端の研究現場に身を置くことで、自身の研究の方向性を国際的な研究状況に照らして見定める機会にもなっている。日本を研究拠点とし、ポーランド語、ドイツ語、英語を読む日本語使用の研究者として、日本やアジアにおける戦争の記憶との比較に展開することで、この領域の研究に国際的スケールで貢献できるという考えを強くしている。
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今後の研究の推進方策 |
5月末にドイツで開かれる国際学会でワルシャワ・ゲットーに関する報告を行い、論文にまとめる。6月には招待を受け、ワルシャワのユダヤ歴史研究所で日本におけるホロコーストの受容を比較的見地から概観する講演を予定している。6月から9月前半にかけては、ポーランド内の未調査の収容所跡地等を見学するほか、東欧地域のユダヤ関連施設の調査を行う。 9月半ばの帰国まで、本課題に関連する資料を集中的に集める。ポーランド内外の研究者にもコンタクトを取る。 帰国後は、資料を集中的に読み込み、日本語あるいは英語で研究をまとめていく。さらに、2018年度には共同研究者や内外の研究者を招聘してまとめのシンポジウムを日本で行う。その構想を練り、招聘者に打診を始める。
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