研究課題/領域番号 |
15KK0064
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研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | ポーランド文学 / ポーランド美術 / ホロコースト / 中東欧 / ユダヤ人 / 反ユダヤ主義 / 記憶 / ワルシャワ・ゲットー |
研究実績の概要 |
2017年9月までワルシャワのポーランド科学アカデミー文学研究所に客員研究員として滞在し、本研究課題の共同研究を行った。毎月行われるホロコースト文学研究チームの講演会・ゼミに出席し、新しい知見を得たほか、研究所およびポーランド国内外で開催される講演会やイベントに参加し、研究者とのネットワークを広げた。 5月にはワルシャワ・ゲットーを描くポーランドの画家のグラフィック・シリーズを調査し、ポーランドにおけるゲットーの集合的イメージの形成について、ハンブルク大学の国際学会で報告した。学会では、中東欧地域のホロコーストの記憶に関する欧米の文化・文学研究者と研究上の意見交換をし、今後につながるネットワークを構築した。6月にはワルシャワのユダヤ史研究所から招待を受け、日本のホロコースト受容と第二次世界大戦の記憶について講演をした。 6月はリヴィウのシナゴーグ跡地に作られたメモリアルを見学、中東欧都市の歴史センターで研究者と交流したほか、旧ガリツィア地域のユダヤ人墓地保存の活動をするグループとも知己を得た。8月、9月はゲットーのカラー写真をめぐって調査を開始し、ポーランド内外の研究者とコンタクトを取って会い、有益な示唆を得た。 8月はイスラエルのヤド・ヴァシェムやホロコースト関連施設を現地の研究者の案内で見学した。また、ベウジェツ絶滅収容所跡地を見学した。9月は、ウーチにあるマレク・エデルマン対話センター所長とウーチ大学教授の案内のもと、ヘウムノ=クルフムホフ絶滅収容所で行われた記念式典に参加し、映画『SHOAH』にも映った教会におけるミサも聴講するなど、一連の行事を見学することができた。さらに、グダンスクに開館した第二次世界大戦博物館を見学した。研究滞在中の講演をもとに、ポーランドのホロコースト研究の第一級の学術誌である『ユダヤ人虐殺』誌に日本のホロコースト受容について論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワルシャワにおける研究滞在では、研究上のネットワークを予想以上に広げることができた。さらに、ポーランド語での講演、寄稿の依頼も続いた。そこでのフィードバックは日本にては得られない物であり、新しい知見を得るインプットとともに、アウトプットの点でも充実した研究滞在になった。 さらに、日本におけるホロコーストの受容に対する関心にこたえるために、日本の第二次世界大戦の記憶の調査も行ったことから、記憶を比較的視野から捉える方向に向かい、次の研究課題も見えてきた。 2018年11月のシンポジウムに向けて、すでに招聘の内諾も国内外の研究者から得ており、準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の基課題である科研費若手(B)との共催として、海外共同研究者と共同研究先のポーランド科学アカデミーから研究者を招聘し、11月に2日間の予定で名古屋で国際シンポジウムを開催する。その報告は日本語にして日本で刊行し、研究のまとめとする(刊行自体は2019年度にずれこむこともありうる)。 シンポジウムのために4月以降、会場手配等の準備、招聘を進める。5月・6月に予定しているポーランド渡航時に、招聘予定の研究者と打ち合わせを行う。 福島県白河市のアウシュヴィッツ平和博物館ニュースレターに、ポーランドのホロコーストのメモリアルについて4回寄稿することになっており、こうした機会を利用して、日本であまり知られていないポーランドにおけるホロコーストの記憶の現状を広く伝えていく。
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